其の493:(遅い)大島追悼「戦場のメリークリスマス」

 前回に続いて“メジャー&真面目な映画”第2弾を(笑)。

 先日、惜しくも亡くなられた大島渚監督。お元気な時にはメディアにも相当出られていましたが・・・若い人は彼がその昔“松竹ヌーベルヴァーグ”の中心人物だったとか、知ってるのかねぇ??筆者は生憎、大島監督の全ての作品を観ている訳ではないのですが・・・彼の代表作といえば「青春残酷物語」、「愛のコリーダ」そして「戦場のメリークリスマス」辺りになるだろう。その中でも今回取り上げるのは「戦場のメリークリスマス(略して「戦メリ」)」!「愛のコリーダ」の猥褻裁判の件を書いてもいいんだけど・・・「戦メリ」はレンタルしてないのよ(ソフトは売ってます)。そんな<希少性>もあって、こちらをチョイスした次第。大メジャー、大ヒット作なんで、さくっ、と書きマス。


 1942年、ジャワ島(現インドネシア)レバクセンバタの日本軍俘虜(捕虜)収容所。ある日、朝鮮人軍属カネモト(=ジョニー大倉)が房内で男性オランダ兵を犯す事件が発生。粗暴なハラ軍曹(=ビートたけし)は独断での処置を決め、日本語を話せる捕虜の英国陸軍中佐ジョン・ロレンス(=トム・コンティ)を“万一の時の証人”として立ち会わせる。その時、収容所所長のヨノイ大尉(=坂本龍一)が現れ、状況を察知。ハラに後刻の報告を命じて会議のためバタヴィア(現ジャカルタ)へと向かう。その直後、日本軍の輸送隊を襲撃して捕らわれた陸軍少佐ジャック・セリアズ(=デヴィッド・ボウイ)の軍事裁判が行われる。一貫して無罪を主張するセリアズに不思議な魅力を感じたヨノイは、彼を収容所で預かることにしたのだがー。


 日本・イギリス・ニュージーランド合作。製作費16億円(当時)。大島渚の作品中、最大の大作であり、坂本龍一ビートたけしデヴィッド・ボウイほか豪華キャストが集結した最も国際色豊かな作品でもある。サー・ロレンス・ヴァン・デル・ポストの「影の獄にて」中の2篇「影さす牢格子」及び「種子と蒔く者」をミックスして脚色(大島、ポール・マイヤースバーグの共同)。ニュージーランドのラロトンガ島、オークランドで長期ロケが行われた。余談だが・・・たけしさんがよくネタにしていた“大島監督が思い通りに動かないトカゲに「どこの動物プロだ!?」と怒鳴った”という爆笑エピソードの場面は、映画のどアタマです(笑)^^

 公開当時(1983年)には「戦争シーンのない戦争映画」とか「豪華キャスト集結」とかよく言われてたし、テレビ放送された時にも観たけれど・・・いま改めて観ても→→→よく出来てると思う。デヴィッド・ボウイの<少年時代の回想シーン>とかあったのはすっかり忘れてたが(苦笑)。戦争映画の体を取りつつ、グローバルに<人間そのもの>を描いたヒューマンドラマだと改めて認識しましたワ♪

 音楽(→いまさら言うまでもないけど担当は坂本龍一)もいいし、俳優もいい。・・・当初、セリアズ役にはロバート・レッドフォード、ヨノイ役とハラ役には滝田栄緒形拳勝新太郎ほかも想定されていたそうだが・・・今では教授&たけしさんでしか考えられないなぁ〜(当時、2人が大島さんに「僕らは俳優じゃないんで、怒鳴ったら降ります」と宣言してオファーを受けたのは有名なお話)!遺作の「御法度」にもつながる“ホモセクシャル・テイスト”はボウイと教授ならばこそ。初期構想の俳優陣だったら、全く違う作品になっていたかもしれない。また、意外(?)なところでは、内田裕也内藤剛志が出ていたのは・・・忘れてた^^。後のトレンディ俳優・三上博史も出ている筈なのだが・・・未だにどこに出てるか分からない(苦笑:分かった人、教えて)。

 ついでに細かいこと書くと、今作のスタッフ(第1助監督)に「狼たちの街」や「007/ダイ・アナザー・デイ」を手がけたリー・タマホリの名前も(驚)!古い映画を観直すと、こういう面白い発見もある(人に歴史あり)。

 
 坂本教授は今作ののち、同じく俳優&音楽担当としてベルトルッチの「ラストエンペラー」に参加し、アカデミーをGET。たけしさんは今作以前にも何本か映画に出ていたけれど・・・“一般的”には、これで映画に開眼(→有名なラストシーンで全部持ってったからか?)し、6年後「その男、凶暴につき」で監督としてもデビュー(←これには「仁義なき戦い」シリーズの 深作欣二監督の降板が絡むので一概には言えんけど)。<世界のキタノ>として手掛けた初の海外合作映画「BROTHER」(’00)のプロデューサーが、今作でプロデュースを担当したジェレミー・トーマス・・・!「戦場のメリークリスマス」は後につながる“良き種”をいろいろ蒔いた作品でもあったのだ。

              改めて心より大島渚監督のご冥福をお祈り致します。