其の610:男と女という生き物は・・・「愛の狩人」

 東京は梅雨明けはまだだけど、水不足・・・。雨嫌いだが、どかっと降って欲しいもの。月末の都知事選は・・・さて、どうなりますやら。ちなみに筆者は「ポケモンGO」はやってません^^

 お話変わりまして→→→観たことある、なしは別として映画「卒業」(’67・米)のタイトルぐらいは大半の人が聞いた事ぐらいはあると思う(注:20代以下は除く)。“アメリカン・ニューシネマ”を代表する傑作の1本であり、昔からさんざんラストシーンはパロられてたし。その「卒業」の監督、マイク・ニコルズが手掛けたのが「愛の狩人」(’71)。人気と知名度は「卒業」に比べて劣るものの、これがある程度年食って観ると(若いうちは中々分かりませんぜ)・・・なかなか味わい深い作品。


 ニューイングランドの大学寮ー。同じ部屋で学生生活を送るサンディ(=アート・ガーファンクル)とジョナサン(=ジャック・ニコルソン)の会話は女性に対することがほとんど。サンディは女性に対して真面目なロマンティスト。一方のジョナサンは女性とは肉体関係だけで充分、と大きく考えが異なっている。そんなある日、近くの女子大で行われたパーティーに出席したサンディはスーザン(=「砲艦サンパブロ」、「ソルジャー・ブルー」のキャンディス・バーゲン)に一目惚れ。ジョナサンのアドバイスを受けてアタックしたサンディはスーザンと交際を始める事が出来た。初めて出来た彼女とのデート内容を日々聞かさせるジョナサンは、スーザンを誘惑してサンディより先に彼女と肉体関係を持つことを画策して・・・!?


 原題は「Carnal Knowledge」。邦題と違って“性交”という直球過ぎるタイトル!上記の粗筋はホントに映画の最初の方だけ書いたので、これ読むと「青春映画」と思われそうだし、原題の意味読むとエロエロな映画と思われそうだが・・・実は2人の男の大学時代から40代までが描かれる「人生映画」とも言うべき1本。

 以前にも書いたけど「恋愛映画」の大半が<恋愛のゴール=結婚>と描いているものが未だに多いけれど、実際はそうではない。結婚後の方が本当に大変なんだから!!マイク・ニコルズは「卒業」の最後の最後で、その旨をそれとなく“暗示”していたけど・・・今作は「卒業」に内包しつつも、さほど焦点当てなかった部分を大きく前進させた一作。<愛と性について>はもちろん<既婚と独身、どちらが幸せか?>という人類永遠のテーマにまで踏み込んでる。「卒業」の音楽に使ったサイモン&ガーファンクルを<俳優>として起用したのは、大ヒット作「卒業」を踏まえての・・・どう考えても確信犯でしょう。「『卒業』観て感動した客を今度はびっくりさせてやるぜ!」とマイクがにやりと微笑む姿が・・・筆者には見える(笑)。大学生時代のやりとり等は、いかにも“青くて”ー笑ってしまった。

 あまり書くとネタバレするけど・・・「○年後」とかご丁寧にスーパー出ないから、2人の男の衣装やヘアスタイル、台詞から“いま2人がどの年代で、どう暮らしているのか”を観客は推察しつつ映画は進行。巨乳好きを自称するジョナサンが社会人になってから出会って同棲するのがアン・マーグレット演じるCMタレント(注:彼女のヌードシーンはあるものの、過剰な期待はしないように)。出会った最初はラブラブモードでいいけれど、“リアル”に言えば生活がある訳で・・・次第にマンネリ感が2人の間を漂い、女性がジョナサンに結婚を口にして(←70年代だしさ)ジョナサンが激怒&苦悩する下りはニコルソンの名演技もあってリアルっちゃーリアル!ニコルソンがめっちゃ若いのも驚くけど(笑)、昔から演技派俳優で強面(!)だった事を再確認した^^。

 マイク・ニコルズは<友人が親友の彼女を寝取る>という「卒業」同様、アンモラルな内容を取り扱ってるけれど(少々、石原裕次郎の「狂った果実」を連想させる。もっともあちらは兄弟間の話だが)、映像的にも登場人物がいきなりカメラ目線で語りかけてきたり(ウディ・アレンの映画と違って、カットが変わると聞いてる相手の顔になる)、姿を映さずに音声だけで処理する場面等、派手さはないものの面白い事をちょいちょいやってる。この辺りにも彼の才気が見て取れた。ラストは「えっ、これで終わり?!」という感じがなきにしもあらずだが。

 
 時代変わって21世紀。アメリカの若者事情や結婚事情は・・・どうなんでしょうかねぇ?東洋の島国・日本と同じく性の低年齢化&晩婚化で問題になったりしてるのかしら??男なんて若い時は精神的なつながりよりも、ただヤリたいだけだったりするけれど(これは古今東西万国共通)。男女間に流れる深い河・・・即ち精神的、肉体的な隔たりを2人の男を代表としてごくシンプルな形で提示した今作の<解答>は・・・人類が存続する限り出ることはないでしょう。