4月になりました。早く咲いた2021年の桜は・・・もう散りかけ(苦笑)。
70年代に幼少期&少年時代を過ごした筆者が「アメリカン・ニューシネマ」好きである事は当ブログで幾度も書いてきましたが・・・なので、またニューシネマを紹介します(笑)。作品は「断絶」(’71)!・・・すみません、メジャー作品ですよね。監督はモンテ・ヘルマン!!・・・う~ん、一般的な知名度は低いですな。「断絶」と闘鶏を題材にした「コックファイター」(’74)が映画オタク内では有名なんだけど^^。後年、タランティーノの「レザボア・ドッグス」で製作総指揮を務めてます。この「断絶」は「ニューシネマ」にして「ロードムービー」、そして<カルト映画>という範疇にも入るという・・・不思議な味わいの映画。
改造した旧式シボレーに乗る運転手“ドライバー”(=演じるのは歌手のジェームズ・テイラー)と整備担当の“メカニック”(=「ビーチボーイズ」のメンバー:デニス・ウィルソン)のコンビは地元住民との賭けレースで生活している。ロサンゼルスを出て南東へ向かう途中、ヒッチハイカーの“ザ・ガール”(=ローリー・バード)が2人の車に乗り込み行動を共にするように。そんな旅の中、最新のポンティアック・GTOに乗る中年男“GTO”(=サム・ペキンパー作品の常連俳優、ウォーレン・オーツ)とお互いの車の所有権を賭けて、ワシントンD.C.まで大陸横断レースをすることにしたのだが・・・。
メインとなる4人の役名がドライバー、メカニック、ザ・ガールにGTOって・・・まんまやんけ(笑)。ヒッピーの若者3人はそれほど台詞もないし、お話も超シンプル。加えて彼らがどんな人なのかの説明もない(GTOはヒッチハイカーを乗せる度、毎回適当な経歴を語ってはいるが)。カウンター・カルチャー敗北の中、人生の目的を見失った分、車に執着するようになった若者の姿を余計な情報を一切削ぎ落して純粋に映画を構築したかのよう。ちなみに原題は「2車線の舗装道路」の意。これを「断絶」という邦題にした当時の配給会社の人は素晴らしいセンスだね^^。
大手スタジオ「ユニヴァーサル」的にはテレビの普及で観客が減少した事で、若者ウケしそうな3本の映画を製作。その内の1本が今作である(あとの2本はピーター・フォンダの「さすらいのカウボーイ」とデニス・ホッパーの「ラストムービー」)。確かに映画は若い男女がメインで、公道レースの場面もバンバンあるし(ロケ先の現地警察にその都度交渉して撮影許可取ったそうな)若者ウケする要素は入ってるんだけど・・・作品自体は割合淡々と展開(編集もヘルマンが担当)。そのおかげで観ていて、燃える事は・・・ない(苦笑)。
ヘルマン自身は、依頼された仕事ながら新たに脚本家を雇ってストーリーを直させ、積極的にキャスティングを敢行(ヒロインのローリー・バードはズブの素人ながら、街でスカウトしたんだって)。自らロケハンしたルートをそのまんま辿る形で撮影をスタート。町々で現地の人を臨時エキストラとして仕込みつつ、撮り進めていったという。その結果、撮影当時の時代の空気をうまく掬い上げている。元々は<若者ウケ企画>ながら自分なりの考えを作品に投入したようで、今作を「ラヴ・ストーリー」とコメントしてる(「アメリカン・ニューシネマ」の神話 ネコ・パブリッシング刊より)!いろいろメイン4人についてコメントしていますが書くとネタバレになるんで(笑)・・・是非各自でご確認頂きたい^^。ラストカットは・・・超意味深だわ。
これは公開当時には全然関係ないけど・・・今作でヒロインを務めたローリー・バード(当時19歳)は、その後2本ほど映画に出演。1979年、アート・ガーファンクルの自宅で自殺してしまった(享年25)。こういう話も70年代っぽいなぁ・・・(切ないわ)。