其の603:ヴァーホーヴェン流青春映画「スペッターズ」

 過激な作風(エログロ・ヴァイオレンス!)で世界中を魅了(!?)するポール・ヴァーホーヴェン監督。鬼才のオランダ時代(現在もハリウッドからまた母国に戻っちゃったけど)初期の作品「SPETTERS/スペッターズ」(’80・蘭)が、ようやくソフト化(日本では劇場未公開にして、かつて数分間カットされたVHSが出て以来)!!当時の“ヴァーホーヴェン作品の顔”ルトガー・ハウアーも勿論出演^^。ジャンルとしては<青春映画>なんだけど・・・女性と子供がいる時に観てはいけません!!アクションやミステリーでなくとも・・・青春映画撮らせてもやっぱりヴァーホーヴェンは過激だった(苦笑)!!


 大工や自動車修理工をしながらモトクロス・レースに夢中になっているリン(=ハンス・フォン・トングレン)、エフ(=トーン・アグタブルフ)、ハンス(=マールテン・スパンジャー)の悪友3人は気ままな青春時代を謳歌している。モトクロスのチャンピオン、ゲリー(=ルトガー・ハウアー)は彼らにとってのヒーローだ。そんなリンとハンスは若手が集まるモトクロスの試合に出場。リンが見事優勝し、頭角を現す。ひょんなことからレース場で軽食を売っていたブロンド美女、フィンチェ(=レネ・ソーテンダイク)と知り合った3人は、3人ともが彼女に好意を抱く。
 そんなある日、フィンチェとその兄が切り盛りする屋台カーがリンたちの住む街にやって来る。彼女と再会した3人はアプローチをかけるものの、彼女が選んだのは最も将来に期待が持てるリンだった。TV局の男(=ジェローン・クラッべ)を誘惑したフィンチェはリンに日本企業のスポンサーをつけることに成功する。彼のモトクロス・レーサーとしての展望が開かれたかと思われたが・・・思わぬ展開が3人の青年を待ち受けていた!!!


 いかにも<80年代>らしいポップにしてノリがいい(でもって軽い^^)テーマ曲からスタートする今作。ヴァーホーヴェン監督作だけに邦画やハリウッドでよくあるパターンを予想してると少々驚く破目になるでしょう。メインの野郎3人は平気で万引きしたり、ゲイの人に悪戯したり、チ●コ出して大きさ測ったり・・・と、少々ワルにして馬鹿(笑)。その3人に絡むフィンチェも自分の目的の為なら誰とだってエッチする(ヴァーホーヴェン作品は基本モラルの低い&ゲスい人多い)。ポルノ映画さながらの<おっぱい&チ●コ露出率>で仰天する人も多そうだなぁ〜^^。

 「これがこういう展開に発展する?!」といった些細な件からダーク(!?)な内容に一変する今作。<男同士の友情が壊れる>とか<女を巡って憎み合う>とか<熱い涙を流す>事などは一切ありません(笑)。性的なシーン(モザイクなかったらマジでモロ)から反キリスト教描写まで・・・最後どうやって終わるのか、ラス・メイヤーの「ワイルド・パーティー」初めて観た時みたいに、いろんな意味でハラハラしたわ^^。

 ・・・といっても(慌ててフォロー)スタッフは超豪華!カメラマンは後年「トータルリコール」も撮影したヨスト・ヴァカーノ。モトクロスのレースシーンは並走カットもあって「これよく撮ったな〜」と感心する画も多々あり。脚本は後に「ブラックブック」でも組むジェラルド・ソエトマン。ちょいちょいある過激シーン(ネタばれするんで書けない・・・)は実は脚本にはあっさり書かれていて、ヴァーホーヴェンが現場で足したのではないかと筆者は邪推してる(笑)。

 出演シーンはさほど多くはないものの、今作がアメリカで公開された事でルトガー・ハウアー(→「ブレードランナー」ほか)やジェローン・クラッベ(→「逃亡者」ほか)らがハリウッドからお声がかかるキッカケとなる。ヴァーホーヴェンもその才能を認められてこそハリウッドに誘われた訳だし^^。「大傑作!」とは言いませんが、ヴァーホーヴェンファンは押さえて欲しい一作。


 メーカーさんには頑張ってもらって他のオランダ時代の作品もソフト化(VHSしか出てないものあり)して欲しいっす♪