其の602:異色戦争活劇!「戦略大作戦」

 ついこの間「誕生日」を迎えました・・・この年齢になると、マジで嬉しくもなんともない(苦笑)。

 先日、来月公開予定のミステリー映画「探偵ミタライの事件簿 星籠の海」(注:「星籠」は「せいろ」と読む)を試写会にて鑑賞。島田荘司先生による御手洗潔シリーズ“初”の映画作品です(筆者も御手洗シリーズは2、3作品は読んでるのですが、同名原作は未読)。天才脳科学者にして、探偵が趣味の御手洗潔玉木宏(←島田先生直々の指名)、映画オリジナルキャラ・小川みゆき役で広瀬アリスが出演。広島県福山市を中心に怪事件が幾つも絡み合う&幕末の歴史の謎と・・・いかにも島田御大らしい複雑な展開(笑)!
 筆者は嫌いじゃあないですが・・・文庫にして上下2冊の大著を2時間以内にまとめた結果、ちょっとテンポが早すぎる気が。こういう本格ミステリーは観客も推理しながら観るものですが、どんどん話が先に進むんで観客に考える時間が全く与えられてない(苦笑)。歴史ミステリー要素も入る分、まさに<和製「ダヴィンチ・コード」>になっちゃった(あの映画はイマイチだったよね)。もう少し尺あってもいいから作劇の緩急及び御手洗のキャラを掘り下げて紹介する“余白”あるいは“行間”のような場面もあってよかったと思う。御手洗潔シリーズを読んでる人ならよいけれど、これだと御手洗が単にクールなホームズ風の天才としか分からないし。その点、東宝の「金田一耕助シリーズ」はその辺りもクリアーしていて、やっぱり素晴らしいな〜!
 監督は近年「相棒」シリーズをメインで手掛けている和泉聖治。和泉監督なので「冒頭はクレーン撮影で押すんだろうな〜」と思ってたら、本当にそうなってた(笑:劇場版「相棒」3作も冒頭は必ずクレーン撮影で始まるんで)!!<映画>ならではの“スケール感”出すために冒頭クレーンショットーそれはよく分かるんだけど、毎回毎回監督作がこのパターンっていうのも・・・ねぇ?!ちなみに島田御大は映画を気に入ってるようなので、まぁ・・・いいか^^


 
 すみません、前フリが長くなりました。“ミステリー”に続いては、筆者の好きな“アクション”ということで戦争アドベンチャー大作「戦略大作戦」(’70)を紹介します!今作、原題は「KELLY’S HEROES(「ケリー率いる英雄たち」の意)」なのですが、他作品に「空軍大戦略」とか「特攻大作戦」とか・・・似たような邦題がいっぱいあるので注意して下さい(当時の宣伝マンはもう少し違うタイトル思いつかなかったのかしら?)♪


第二次世界大戦末期ー。「ノルマンディー上陸作戦」以来、アメリカ陸軍第35歩兵師団は北フランスの前線で戦い続けていたものの、ドイツ軍の激しい抵抗により戦線は膠着状態にあった・・・。
 そんな中、元中尉ながら作戦失敗の責任を負わされて現在は二等兵のケリー(=クリント・イーストウッド)は捕虜となっていた敵の情報将校ダンコーフ大佐を拉致、上官のビッグ・ジョー(=テリー・サバラス)の所へ連れて行く。ダンコーフを尋問するケリー。すると彼の鞄から金の延べ棒が!ダンコーフを酔わせたケリーは、前線の先にある街・クレアモントの銀行に大量の金塊が保管されている事を知る・・・。ケリーと隊の兵士たちは金塊を強奪すべく、与えられた3日間の休暇を利用してクレアモントへ向けて出発する。果たして金塊強奪は上手くいくのか!?


 先述したクリント・イーストウッドテリー・サバラスの他、怪優ドナルド・サザーランドに、まだ無名時代のハリー・ディーン・スタントンも顔を揃える“野郎オンリー”の大作映画(上映時間145分)!「金塊を求めて男たちが戦いを繰り広げる」ーというストーリーはイーストウッド主演を考えると「マカロニウエスタン」をついつい連想しがちだけれど(マカロニに出るキャラの行動原理は大半「復讐」か「金」)、<1970年>という時代を考えるとベトナム戦争が行われていた時期でもあり、アメリカ国内で厭戦気分が広がっていた頃だから「時代が作った映画」といっていいのかもしれない。けど今作はいま観ても十分面白い❤

 この当時はいまと違って、CGはないから(ミニチュアの合成技術はあったけど)出てくる兵器や破壊する街のセットは実物を作るわけで・・・「戦争映画」は人も大勢出さないといけないし、昔から予算がかかるものだけど、今作も相当なお金がかかってる(旧ユーゴスラビアでロケ)。特にドイツのティーガー戦車(←残念ながら字幕は「タイガー」になってた。魔法瓶じゃないんだから)は本物そっくりで筆者もビックリ!!映画の為に似たような戦車を改造したらしいけど・・・この出来映えは要注目!

 ここまでの文章を読んで、シリアスな作風を想像しているかもしれませんがーちょいちょい笑える要素もあるのでご安心を^^。ドナルド・サザーランドは観客の予想通り、変人キャラを飄々と演じているし(軍人なのにほとんどヒッピー:笑)、アメリカ軍の幹部や将軍たちは無能で完全に馬鹿として描かれてる(爆笑)。声高に訴える反戦映画も数多いが、今作はサザーランド出演の「M★A★S★H」同様、ブラックな笑いで反戦・戦争批判が込められている。監督はブライアン・G・ハットン(←イーストウッドとは前にシリアスな作風の「荒鷲の要塞」でコンビを組んでいる)。イーストウッド個人としてはドン・シーゲルを希望していたようだけど・・・ブライアンさんで良かったのではないかしら?もっともシーゲル演出でどんな作品になったのかは興味は尽きませんが^^



 <どうでもいい追記>あの「鋼の錬金術師」が実写映画化って・・・(あんぐり)。「進撃の巨人」の二の舞にならんかね!?・・・心配だ・・・。