其の566:北野武最新作はコメディ「龍三と七人の子分たち」

 風邪はいつしか治りましたが・・・多忙はなにも相変わらず・・・(いいんか?)。

 先月公開された北野武監督最新作「龍三と七人の子分たち」が、5月15日時点で動員100万人を突破ということで・・・おめでとうございます!!筆者もGW中、時間はないけど無理矢理劇場に行ったら、なんとその回のチケットが売り切れていた!当然その時は諦めたのですが・・・ちょっと嬉しかったな^^。先日、改めて劇場に行った次第。こんなに笑えた北野映画も初じゃないかしら?勿論、上映中につきネタばれしないよう書きます。


 高橋龍三(=藤竜也)は引退したヤクザの元組長。70歳となった今では息子夫婦に疎まれ、肩身の狭いなか余生を過ごしていた。息子夫婦が連休で妻の実家に帰省中、留守を預かる龍三に「オレオレ詐欺」の電話がかかってくる。すっかり信じ込んだ龍三は、示談金が揃えられないお詫びとして指つめを行おうとしたところ、受取人の男は恐れをなして逃げ出してしまった。その夜、龍三と彼の兄弟分・マサ(=近藤正臣)は、かつての仲間モキチ(=中尾彬)がトラブルに巻き込まれているところに出くわした。その場を収めたマル暴の刑事・村上(=ビートたけし)から龍三たちは半グレ「京浜連合」の存在を教えられる。3人はかつてのヤクザだったメンバーを集め、龍三を組長とする暴力団「一龍会」を結成。“世直し”のため、「京浜連合」との抗争を開始するが・・・!?


 <粗筋>を書くと上のような感じですけど・・・「アウトレイジ」シリーズとは異なる、あくまでコミカルなコメディです(但し、俳優陣はマジ演技^^)。ベタなギャグで笑い取りにいってるところはあるものの、大半は台詞やズレてる感じで笑わせるところが多いし(=万民向け)、“少子高齢化”のニッポンですから俳優陣(撮影当時の平均72歳!!)と同世代の方々の動員もあってヒットにつながったのではないかしら。最後はスカッとするし♪データ的なことを書くと、今作は北野武17本目の監督作にして、監督・脚本・編集・出演を担当している。

 企画自体はたけしさんが以前web新潮に発表した短編小説「ヤクザ名球会」をベースに脚本化。「高齢化社会」、「オレオレ詐欺」、「半グレ」、「食品偽装問題」ほか“平成ニッポン”の社会問題を取り入れているのは、さすが情報番組のMCもやっているたけしさんらしい視点。勿論、子分が<七人>というのは、誰もが推測するように「七人の侍」のオマージュだそうな(わかりやすい)。

 「愛のコリーダ」ほか、“激シブ”で売ってた藤竜也、「本陣殺人事件」でジーパン履いた金田一耕助を演じた中尾彬に、テレビドラマ「柔道一直線」において“足でピアノを弾く”伝説のシーン(爆笑)で知られる近藤正臣のほか、「太陽にほえろ!」の“殿下”こと小野寺昭、声優としても活躍する梶浦勉のほか吉澤健、伊藤幸純、品川徹が集結。中でも品川徹は近年、めっちゃ重厚な演技を披露していたのに今回のこの役は・・・よくオファー受けましたな(笑)。こんなにご高齢の方々を集めて中心に据えた映画は、そんなに筆者も記憶にない。北野版「八月の鯨」(’87・米/出演リリアン・ギッシュ、ベティ・デイビス)といったところかも。一方、半グレのボスを演じた安田顕はいまどきの凶悪なワルを巧演!でも若いときは命張ってて、いまじゃ命を惜しまないジイさんたちが相手では(←死ぬのが怖くない人間こそ、正に<リーサル・ウェポン>)・・・彼じゃなくてもビビるよね。そんな悪党ぶりも良かった。来年、誰か彼に賞をあげてくれ(笑)。

 映画のPRのとき、北野組初の「ホン読み」はしたものの(→たけしさんの映画は通常現場でガンガン内容や台詞が変わるから「脚本は覚えないで」が基本スタンス)俳優陣一同「監督が離れた所でモニター観てて、直接の演技指導がなかった」とボヤいていたのは笑えた^^(キャバクラのママを演じた萬田久子はたけしさんと映画のPRで出演した某番組で「今日、初めて監督の声を聴いた」とコメント)。熱心に俳優に演技指導する監督もいれば、そうでない監督もいる。いずれの方法でも結果映画は出来る(出来は別として)・・・映像の世界って、面白いネ。どっちがいいのか、筆者も分からないけど。

 詳しくは書きませんが・・・少々展開がご都合主義だったり、クライマックスの“殴り込み”も、欲を言えばもうひと盛り上がり欲しい感じはしたけど、筆者はコメディとして観に行って、結構笑えたから良かったのではないかしらん(クスリとも笑えないコメディは観てて死ぬ程辛い)。子分連れて大暴れにいくところは、少々「フライデー事件」を思い出したりもして(懐)。たけしさんらしい映画という感じを筆者は多いに受けました。
 
 政府は年金にしろ、介護問題にしろ、もっと考えないといけない部分は多々ありますが・・・我が家のご近所にもお年寄りは大勢いらっしゃいますが、変に老成化せず過ごして頂きたいと願うばかり。若い時は戦後日本の復興の為、さんざん働かれてきたわけですから、余生を大いにお楽しみ頂きたいと思います。