其の534:これぞ地獄絵図「激動の昭和史 沖縄決戦」

 めちゃ暑い日が続いていますが・・・週末あたりには関東も梅雨入りのようで・・・はぁ〜あ(溜息)。

 またまた試写会に行って、相原コージ原作漫画初の実写映画作品「Z〜ゼット〜」を観ました(7月下旬公開予定)。相原コージの「コージ苑」は連載中、リアルタイムで読んで爆笑していた世代だけに、いかにも相原先生が書きそうなギャグ満載の“ゾンビ漫画(しかも特定の主人公がいないオムニバス形式)”をいかに鶴田法男監督が料理するか(共同で脚本も)、お手並み拝見〜といった想いで試写会場へ向かった訳。さて、肝心の出来なのですが・・・相原先生も出演していたのに、少々残念な出来でした(哀)。

 原作から幾つかキャラと話を集めて<ゾンビがあふれる病院内での籠城>をメインに話を展開するようにしたのは良しとしても、何故、登場人物たちがやたらビデオカメラを回す“モキュメンタリータッチ”をメインに採用したのか(→確かに、その内の1台のカメラによって真相解明につながる伏線にはなっているのだが)。この手法、キャラ目線による<臨場感>を出すにはもってこいなのだけど、ど頭からやっちゃってるから展開がリアルタイムなんでタルいタルイ!早々にいびきかいてる親父もいたし(苦笑)。相原漫画特有のゆる〜い空気感を出すためかもしれないが、観ている最中「普通に作れば良かったのに」と何度も思い、途中飽きてきたのも事実。いっそ、無理に1つのストーリーラインにおさめないで原作のように3話ぐらいのオムニバスにして全体を見せる方法にしても良かったかも(→そういうプロジェクトもあるようだが)?

 また俳優が川本まゆ、木嶋のりこ田中美晴ほか・・・メジャーな人が1人もいない(苦笑)。で、演技が学芸会レベルだもの。せっかく再現してた原作の相原ギャグがほとんど笑えなかった(ゾンビのおっぱい触りたがるアホ中坊の下りは良かったが^^)。鶴田監督は「おろち」が面白かったので期待してたんだけど・・・ホントに残念残念!!!
 ちなみにただの「Z」で検索すると、イヴ・モンタンのサスペンス映画が出てくるのでご注意あれ☆


 
 街がゾンビで溢れる光景は地獄だが、住んでるところが戦場になるのも地獄!そんな状況を描いた映画が「激動の昭和史 沖縄決戦」(’71)!昭和19年から翌20年にかけて行われた沖縄戦を史実に創作を交えて描いた大作である。監督は「独立愚連隊」シリーズや「日本のいちばん長い日」(’67)他、戦争映画の傑作をものにしていた岡本喜八(このブログにもちょいちょい出てきますナ)。今作は「エヴァ」の庵野秀明監督が<もっとも回数を観た映画>と語る作品でもある(「エヴァ」ファン必見?!)。


 昭和19年7月、アメリカ軍によってサイパンが陥落。太平洋戦争は最終段階を迎えようとしていたー。敵を本土に至る手前で食い止めるべく大本営は沖縄に第九師団、第二十四師団、第六十二師団を基幹とする約20万の兵力を送り込む。更に第三十二軍の司令官として牛島中将(=小林桂樹)が着任。彼を迎えたのは参謀長の長少将(=丹波哲郎)と、秀才で合理主義者の高級参謀・八原大佐(=仲代達矢)。八原の作戦構想は、日本の航空戦力は米軍に太刀打ち出来ないとの観点から<洞窟陣地>を築いて決戦を行なうアイデアだった。だが大本営の沖縄各地に航空基地を設営、島全体を“不沈空母”とし米機動艦隊と航空決戦を行なう、というもので第三十二軍と対立する結果に。昭和19年10月10日、「沖縄大空襲」で那覇の町は焦土と化す。そんな状況下にあって大本営は第九師団を台湾へ!突然の兵員削除による戦況の逼迫に伴い、県庁も首里の壕へ、軍司令部も首里城の大地下壕へと移動する。「防衛召集」の下、軍と民間人の編成が行われる中、翌20年4月1日、アメリカ艦艇は嘉手納沖に押し寄せ、20万の米軍兵が怒涛の如く上陸。こうして沖縄は県民までもが戦争の渦中に投げ込まれたー!!


 沖縄県民の3分の1が亡くなったといわれる史上空前の陸上戦(←この前に行われたのがイーストウッドも描いた「硫黄島戦」)の様子が上映時間2時間29分の間に「これでもか、これでもか!」とばかりに描かれる超濃密なオールキャスト大作。筆者も結果をわかってて観る日本人ゆえ、鑑賞中はかなりブルーになったが・・・これ翌年の「沖縄返還」を控えて公開された1作。当時映画館で観た人は相当複雑な想いを抱いたことだろう。

 ブレまくる軍上層部に左右され、悲惨な状況に追い込まれる人々たちの姿は観ていて胸が痛い限りだが・・・脚本を描いたのは名匠にして名脚本家の故・新藤兼人先生!岡本と共に沖縄(←当時は<アメリカ>!)でシナハンした新藤先生は山ほど集めた文献を下に何の制約も考えず、原稿用紙500枚もの大作を書き上げたという。ただ、その新藤脚本には辻町の女たちが将校たちの身の周りをいろんな意味で“お世話”をするシーン(・・・それは実際にあった話ではあるのだが)ほか、先生お得意の“極限状態に置かれた人間の生と性”描写が多分に含まれていたという。ただ当初からプロデューサーの要請で「脚本は3回書く」という条件付き&撮影開始が迫っていたこともあり、岡本監督主導で大幅に“生と性”を省きつつ「鉄血勤皇隊」、「ひめゆり部隊」ほか男女学徒隊、前線で戦う部隊の描写を増やして「決定稿」としたそうだ(「ノンクレジット」だが、さらに長坂秀佳が助っ人として雇われてまとめる)。趣味嗜好と感性の違いだから致し方ないことだが・・・新藤脚本まんまだったら、大分作品の印象が変わっただろうなぁ!かなりエロかったと思う^^

 「東宝映画」だけに出演者は豪華ながら“いつものメンバー”ではあるんだけど(笑)史実的にも温厚で知られた牛島中将の小林桂樹、気性が激しい丹波哲郎に冷静に策を練るインテリ将校の仲代達矢・・・皆ハマり役!中でも岸田森の演じたニヒルな軍医は印象的だ。あんな医者が実際いたかどうかは不明だが^^。

 また、戦争映画ゆえ<戦闘シーン>が多々描かれるが、米軍の「M4中戦車シャーマン」は自衛隊の協力で実物が使われてるし、東宝といえば<特撮>がお家芸だが今作は陸戦中心のため、それまでの東宝戦争映画よりは少ないものの、ミニチュアで作られた「戦艦大和」も登場するし、ビジュアル面でも頑張っている。

 第三十二軍の首脳陣の様子をメインに、各部隊、大本営野戦病院、様々な市民たちの様子が早いテンポで描かれるため、沖縄の地名及び場所と多少の沖縄戦の予備知識がないと分かりにくい難点はあるものの、これはすぐれた戦争映画ですよ!先述の「Z〜ゼット〜」みたいに観てて飽きなかったし(笑)。現在の沖縄の基地問題ほか、在日米軍の問題のルーツは沖縄戦にある。日本人として沖縄に目を背けてはいけないのだ。


 
 早今年も6月・・・。このままじゃ、また今年も仕事だけして1年終わりそう・・・(ゾッ)