其の498:タイトルで損してる「バス男」

 「最近、コメディを書いてないなぁ・・・」と思い、ふと思い出したのが今回の「バス男」(’04・米)。当時、「電車男」がブームになっていたので、それの“便乗”で酷い邦題になってるけど(責任者でてこい!)これは面白いゾ!筆者は個人的にはベタなのが好みではあるのだが、この作劇は素晴らしいと素直に思うのでありマス。


 ナポレオン・ダイナマイト(=主人公の名前が原題!演じるのはジョン・ヘダー)は引きこもりの兄とオフロードバイクマニアの祖母とアイダホの田舎町で暮らしている高校生。家にクルマがないので小学生が乗るスクールバスで学校へ通い、クラスでは変わり者としてバカにされている。そんなある日、祖母がバイク事故で入院したため、代わりに叔父のリコが家にやって来た。彼は兄に共同で行うビジネスの話を持ちかけるー。その頃、ナポレオンはひょんなことから変わり者の女の子デビーやメキシコ系のペドロと友達に。そのペドロが生徒会長選挙に立候補したことで、ナポレオンとデビーは彼を当選させるべく動き出したのだが・・・。


 上記に書いたようにイケてない高校生たちをメインにしたオフビートな青春コメディ。ぶっちゃけ、主人公は外見も痛いけど、行動もマジで痛い(笑:ど下手クソな似顔絵をダンスに誘いたい女子にプレゼントする下りは爆笑)。10代&20代前半って男女とも未だ青いからバカやってた訳じゃない?で、それを後年振り返ってみると余りの馬鹿さ加減に飲んでて笑いのネタにしてるわけで^^。そんな若き日々の痛さ・恥ずかしさ・馬鹿さ加減を“肯定的”に描いたことからアメリカでは共感を呼んで低予算作品ながらヒットを飛ばした(→日本未公開ながらDVDは出てますよ)。

 今作は監督のジャレッド・ヘスが学生時代に製作した短編映画を元に長編化したもの(→この短編、DVDに収録されてるんだけど、あちこちにベースになった作品の演出が観られるので興味深かった)。ストーリー的には筋らしき筋はペドロの選挙ぐらいからようやく展開する感じなんだけど、その前まではナポレオンや兄と叔父、デビーたちの日常描写を数珠つなぎ的に展開(←これもフェリーニの影響か?!)。全編通してなんともいえない“妙な味わい”がある(現在オタクやってる若者たちは「俺たちの生き方は正しい!」と涙するかも)。これはー文章では・・・う〜ん、なかなか伝わらないなぁ!!「とりあえず観て」としか筆者も言えない(苦笑)。おまけにクライマックスの●●●(←ここは書けない)はちょっと感動するよ♪

 
 ジャレッド・ヘスは今作以後「ナチョ・リブレ 覆面の神様」(’06)や「 Mr.ゴールデン・ボール/史上最低の盗作ウォーズ」(’09)を監督。「 Mr.ゴールデン・ボール〜」(←このタイトル自体は笑える)は未見だが、「ナチョ・リブレ〜」はかなりスベってた(苦笑)。けれども「バス男」に関しては不思議な味わいのある快作コメディだと断言しよう。いじめられっコがいじめっコに逆襲する「ヘザース/ベロニカの熱い日」にノレなかった人は是非こちらを(「バス男」も「ヘザース〜」、どちらも“カルト”なのは共通してるけど)^^


 <どうでもいい追記>日本でも近年、オフビートなコメディ映画って増えてるけど・・・いまいち笑えないのが多くてあかんわ(笑う前提で観ていて、全く笑えないのが一番キツい)。そうなると、ついついベタな笑いのある映画をチョイスしてしまう(全編、下ネタでもいいけど:笑)。ホント、人を泣かせるより笑わせる方が何倍も難しいよねぇ・・・。