其の616:トルナトーレ最新作「ある天文学者の恋文」

 早10月になりましたがー先月から半月以上、風邪による咳が止まりません。やばいっす・・・。

 そんな状況下、きちんとマスクをしてジュゼッペ・トルナトーレ監督最新作「ある天文学者の恋文」を鑑賞。音楽は勿論、トルナトーレの盟友エンニオ・モリコーネだ^^絶賛公開中につき、当然ネタばれは書きません❤


 著名な天文学者で大学教授のエド(=「運命の逆転」、「ダイ・ハード3の」ジェレミー・アイアンズ)とその教え子で映画のスタントウーマンのアルバイトをしているエイミー(=「007/慰めの報酬」、「オブリビオン」のオルガ・キュリレンコ)は、この6年、“秘密の恋愛関係”にあった。エドの長期に渡る出張でしばらく会えなかったある日、エイミーに彼から「もうすぐ会える」という旨のメールが届く。ところがエドの代わりに講義を行う教授から、彼が数日前に亡くなった事が発表される。あまりの突然の訃報に動揺するエイミー。ところが、その後もエイミーにはエドからのメールや手紙の他、DVDに録画されたビデオレターが届く。エイミーはエドが家族と暮らしていたスコットランドエディンバラへ向かうが・・・。


 前作を意識してかどうか分からないけど・・・日本の宣伝会社は“ミステリー”として売ろうとしていますが・・・マジで違います(脚本も書いてるトルナトーレ自身もインタビューで否定してる)!これまでも「恋愛」、「人生」をテーマに描いてきた彼だが・・・今作も深〜い「人生映画」だと筆者は思った。「面白い」というよりは「良い映画」!!ただ設定聞いただけだと日本じゃ「ゲス不倫」だと叩かれそうだが(笑)。

 今作最大の特徴は完全な“ヒロイン主観映画”である事!彼女が見聞きした事以外は、全くと言っていいほどその他の人物のみで構成されたシーンがない。そして、冒頭の早朝のホテルのシーン以外、ヒロインと相手の男が会話するのはスカイプやDVDというスタイル。この辺りの演出がいかにも現代的で・・・新しいのではないかしら?トルナトーレは構想は以前からあったものの、様々な通信技術が発達した現在においてようやく映画化できると思ったそうな。原題の「コレスポンデンス」は「通信」、「文通」という意味(そのまんま)。それを「ある天文学者の恋文」とは・・・久々にいい邦題ついた気がする(笑)。

 先述したように映画はヒロインの“主観”なので、観客は彼女に感情移入しながら事の成り行きを見守るわけだが・・・オルガ・キュリレンコはいいお芝居してましたよ^^。ほとんどPCの映像越し(事前に撮影・編集されたジェレミー・アイアンズの一人芝居)にリアクションする訳で、下手な女優さんだと間が持たないし。そういう意味でもオルガさんは適役だったと思う。いきなり彼女のアクションシーン(アルバイトのスタントウーマン場面)が始まった時は、映画技師が間違えて他の映画のリールかけたんじゃないかと思ったけどね(笑:「いつか俺もアクションを撮る!」というトルナトーレの布石じゃあないだろうけど)。ちなみに彼女のヌードシーン(乳出しあり)もあるので、ファンの方はそちらもお楽しみに^^

 そしてマエストロ、エンニオ・モリコーネの音楽だが・・・ヒロインによりそうかのような静かな楽曲で全編構成。現実音と共に、いつしか流れ初めて、スーッとフェイド・アウトしていく感じ。マカロニウエスタンやアクション映画のように高らかに歌い上げる作風の方が筆者の好みではあるのだが、この独特の曲も心地よかった♪

 作劇的にはラストがああいう風に終わるであろう事は簡単に推測出来るし、全体的に場面転換のスピードが早い気も個人的にはしたけど(もうあと1、2秒みせて余韻をもたせた方がいいカットが幾つかあった)やっぱりトルナトーレの映画・・・好きだなぁ^^


 <どうでもいい追記>
①:劇場アニメ「君の名は。」が大ヒットということで(筆者未見)。アニメもテレビでやったやつの劇場版が多い中、オリジナルの企画がヒットしたというのはアニメファンとしても嬉しい。でも映画館に行った若い人たちは・・・このタイトルが大昔の大ヒットメロドラマからきている事は知ってるのかしら??
②:実写版「ジョジョの奇妙な冒険」の映画化が発表されたが・・・大丈夫か!?監督は三池崇史。三池さんもここしばらく漫画企画ばっかりオファーされてるようで・・・これもいいんかいな!?ファンとしては制約の多い漫画企画より、オリジナル企画でもっとぶっとんだ作品を撮って欲しいんだけどなー・・・。