其の457:不定期更新「座頭市」シリーズ1

 構想開始から1年余(多分)。ようやく「座頭市」シリーズについて不定期ながら更新したいと思う。
 タイトルでもある主人公・座頭の市を演じるのは言うまでもなく勝新太郎!なんせ26本もあるから・・・時間かかったわ(汗:筆者は何度も書くように暇じゃないのよ)!ちなみに、ここで取り上げるのは純粋に<勝新主演作>のみ。テレビで放送されたドラマシリーズや勝新版をパクった作品(某社の「め●ら狼」や「め●らのお市」シリーズ他)、リメイク版や亜流作(北野武綾瀬はるか版、そして勝手に終わらせた香取慎吾主演作)は除外する。タランティーノ(=アメリカ)やジャッキー・チェン(=以前は香港)の海外映画人はもとよりキューバカストロまでも虜にしたこの一連の時代劇は・・・あなどれない娯楽作でしたわ^^。まず第1回目の今回は1962年に公開された記念すべき第1作「座頭市物語」のみを取り上げます。

 注)このシリーズを書く上で映画の内容上、度々<放送禁止用語(←勿論、伏字にします)>が出てきますが、筆者に差別意識を増長させる意識は毛頭ないことをここに記しておきます。


 盲目の侠客ながら居合い斬りの達人・市(=何度も書くけど勝新太郎)は、下総・飯岡の貸元・助五郎のもとを訪れる。あいにく助五郎が留守だったため、子分たちから市は博打の参加を勧められる。彼を騙そうとする子分共だったが、逆に市が彼らの金を巻き上げた!そこに助五郎が戻って来る。実は助五郎の一家は笹川の繁造一家と対立中。そこで、彼は凄腕の市を利用すべく長逗留を勧める。そんなある日、釣りに出かけた市は繁造一家の用心棒、平手造酒(=「ひらて・みき」と読む。演じるのは天知茂)と出会い、互いに不思議な友情を感じる。逗留中、ひょんなことからヤクザの妹・おたね(=万里昌代)を市が助けることもあった。その頃、結核を患っていた平手が喀血し倒れた事を知った助五郎は繁造一家への出入りの準備開始。助五郎に嫌気がさしていた市は彼の下を一旦は出たのだが・・・。


 ご存じの通り、江戸時代の話なんで、もしかしたらタイトルの「座頭(ざとう)」の意味が分からない人もいると思うので「ミニ知識」として書いておくとー「座頭」は江戸時代における盲人の階級の一つ。一番上の位は「検校(けんぎょう)」。転じて「按摩」、「鍼灸」、「琵琶法師」等への呼びかけとしても使われました(勿論、現在はこの階級は廃止されとります)。市の名字ではありませんので、ご注意あれ^^

 
 「原作」は子母澤寛が雑誌「小説と読物」に連載した歴史随筆集「ふところ手帖」の1篇・・・云々は初級映画解説本にも書いてあるんで、ここでは割愛!1962年、大映京都撮影所の企画部長が企画会議の席で子母澤の原作を挙げたところ、それを聞いた永田雅一社長(通称“永田ラッパ”)が即決採用。脚本家・犬塚稔が短い原作のエッセンスを抽出しつつ、映画用に改変・脚色した。芝居や講談で有名な「天保水滸伝」の剣豪・平手造酒(→モデルは平田深喜)を絡ませた辺りが犬塚の筆のナイスなところ(余談だが、助五郎&繁造親分らは実在の人物)^^。

 一方、1962年当時の勝新は→→→デビューから長い間当たり役にめぐまれなかったものの、60年の「不知火検校」(監督・森一生)で悪の限りを尽くすダークヒーローを演じて注目され、翌61年、田宮二郎とコンビを組んだ「悪名」(監督・田中徳三)がヒットし、続編製作も決まってノリにノッていた頃(→今作と同じ1962年に公開された)。会社(大映)としては低予算(→実際、モノクロで撮影された)でキワモノ的内容だったため、大して期待していなかったふしがあるが、この企画に燃えた勝新丸刈り&脚本段階にはなかった“仕込み杖”のアイデアを提案。仕込みの使い方をも研究する等(殺陣の早いこと早いこと!)、異色のアウトローを演じることに情熱を注ぐ。

 監督は“人体真っぷたつ王”こと三隅研次。当初は池広一夫が予定されていたものの他作品のB班監督を命じられ、三隅の登板となった(既に勝とは何本か一緒に仕事を経験済み)。結果、これが三隅の代表作のひとつになるのだから・・・人生は本当にどう転ぶかわからない(笑)。今作は三隅の他作品や後の「座頭市」シリーズ作に比べてチャンバラシーンは圧倒的に少ないものの(人体切断ナシ)、「なんらかの形でヤクザのいざこざに巻き込まれる」、「居合でローソクや酒樽までをも斬る」、「女性から好意を寄せられるものの、ザーヤク(業界用語)である自分の立場を考えて身を引く」、「インチキ博打で稼ぐ」等の<基本パターン>を演出しきった三隅の功績は大!

 また、このシリーズの<お約束>として数々の“剣豪”が登場するわけだが、今作で平手造酒を演じる天知茂がいい味出してる!さすが新東宝で、かの石井輝男(「キング・オブ・カルト」)に鍛えられただけのことはある(笑:天知は今作が大映映画初出演。以後、度々三隅に起用される)。筆者の世代的には土ワイの「江戸川乱歩シリーズ」の明智小五郎のイメージが強いんだけどさ(笑)。ヒロイン役の万里昌代も平手同様、幸薄くていい感じだが(ぶっちゃけ、今作は明るいテイストではない)・・・そういえば彼女も新東宝で、石井輝男監督作に出てたな!「石井」ミーツ「座頭市」・・・もしかすると両者の間には日本映画史に隠された“巨大な何か”があるのかもしれない(多分、ないだろう)^^。

 
 犬塚稔の脚本、三隅研次の演出、そして勝新太郎の情熱&共演陣の熱演(&さらに書くならば音楽は伊福部昭大先生!マエストロ伊福部は「ゴジラ」だけの人じゃないのだよ)・・・本当にこれはいま観ても面白い(オチはちょっと「ダーティハリー」っぽいのだが・・・もしやドン・シーゲルも影響されたのか?)!!筆者が思うわけだから、当時の観客も当然そう思ったわけで→→→勿論、ヒット!!当時の映画界の決まりとして、半年後には続編が作られることとなった(まだ正式なシリーズ化決定じゃないのが、いまいちムカつくが)。こうして、後に世界を席巻することになる<アクション時代劇>が幕をあけたのであったー。

                 <以下「座頭市シリーズ」2に続く>