其の398:ハイパー伝奇アニメ「獣兵衛忍風帖」

 日本の若手アニメーション監督たちが次々と鬼籍に入る中(合掌)、凄い作品を思い出した!そのタイトルは「獣兵衛忍風帖」!!原作・脚本・キャラクター原案・監督は川尻善昭!!日本では一部の人しか彼の名前を知らないかもしれないけど、「マトリックス」3部作のウォシャウスキー兄弟他、海外では多くの川尻信奉者がおり(→兄弟も今作の大ファン)、後年、ハリウッドからオファーされてアニメ版「HIGHLANDER ハイランダー(=日本語版では主人公の声を小栗旬が担当)」も監督してる凄い人!!知らなきゃ損、損^^


 江戸時代ー。<はぐれ忍び>としてあてどもなく旅を続ける牙神獣兵衛(声:山寺宏一)は、ひょんなことから望月藩お抱えの甲賀組忍者・陽炎(声:篠原恵美)を助ける。彼女は下田村の疫病の原因を解明するため仲間たちと共に村へ潜入したところ、謎の敵の襲撃によって唯一生き残ったくの一だった。陽炎の仲間を皆殺しにしたのは忍者集団<鬼門八人衆>。彼らを追う公儀隠密・濁庵(声:「ヤマト」の真田さんこと青野武)にはめられ、獣兵衛はやむなく濁庵、陽炎と共に彼らの目的を探ることになるのだが・・・!?
 注)のちに今作はTVシリーズ(「獣兵衛忍風帖 NINJA SCROOL 龍宝玉篇」)も放送されるが川尻は絡んでいないのでスルーします。

 
 川尻善昭は1950年、神奈川県横浜市に生まれる。69年、「虫プロダクション」入社。「どろろ」、「あしたのジョー」、「エースをねらえ!」ほか誰もがしる数々の名作にアニメーターとして参加後、84年、映画「SF新世紀 レンズマン」で初監督(→「宇宙戦士バルディオス」の広川和之と共同。但し、これは製作上の成り行きで仕方なくやるハメになったそうで本人は自作とは認めていない)。87年、オムニバス作品「迷宮物語」中の「走る男」を経て菊地秀行原作「妖獣都市」を監督。当初はOVA(オリジナル・ビデオ・アニメ)として製作がスタートしたが、監督とプロデューサーの行き違いで急遽大幅に尺を伸ばして完成(でも、それはどんな行き違いだ?)。これが高く評価され、ビデオリリースに先駆けて劇場公開もされた。作品に感銘を受けたツイ・ハークが川尻に実写映画のオファーをした、というエピソードもある(実現しなかったけど)。日本が世界に誇る知る人ぞ知るアニメ界の巨匠である。

 「獣兵衛〜」は監督として8本目の作品。川尻曰く「自分の代表作を作るつもりでとりかかった」。<時代劇>、そして<山田風太郎の「忍法帖」諸作>の大ファンだったことから、かつてから頭の中にあった忍法のアイデアを全てぶち込んだ。「獣兵衛」という主人公のタイトルだけみても、山田風太郎から多大な影響を受けていることがバレバレ(→山田は実在した隻眼の剣豪・柳生十兵衛を題材に数々の作品を発表しとる)^^どうみても「濁庵」は宮本武蔵の沢庵和尚のモジりだし。

 出世作となった「妖獣都市」にしても、アソコが開いて牙が出る女とか凄ヤバキャラが出るんだけど(笑:ほとんど「デビルマン」のデーモン状態)、今作の<鬼門八人衆>もすんごいキャラ揃い!!刺青の蛇を実体化させる女とか、身体が蜂の巣になってる野郎とか、忍びどころか、もう人間じゃない(爆笑)。まともなのは主人公と陽炎だけ(苦笑)。そんな奴らが92分の尺の中で絶え間なく襲ってくるわけ(合間にエッチな場面もあり)。

 川尻作品の特徴といえば、テンポよく進むストーリーに(そんなに難しい話はないし)、緻密な作画+ケレン味あふれるアクション演出!!中でも今作では「(イメージとしては)1秒間に5回、刀をうちこむ」という旨を説明したところ、アニメーターが「それでは絵がつながりません!」と返答。すると「つながらなくていい」と返したそうな。連続するバトルに高速の殺陣(で斬られた相手は血がドピュー)・・・まさにノンストップ・アクション!これぞエンターテインメントの神髄!!

 クライマックスは<鬼門八人衆>より格上の忍びの大親分と獣兵衛の一騎打ち!その相手というのが<転生の術>で復活した奴で、戦いの場所は炎に包まれている(→巨大木造船の中)・・・。これ、どうみても深作欣二版「魔界転生(いうまでもなく原作は山田風太郎)」のラストまんま!
「(今作では)やりたいこと全部やった」という川尻だが・・・「魔界転生」のファンだということがよ〜く分かりましたわ。オチは某マカロニウエスタンも入ってる気もする(筆者は)^^

 生憎、川尻作品は日本より海外の方が人気が高いし(→03年に公開の「マトリックス」のオムニバスアニメ「THE ANIMATRIX」製作の際には、川尻の参加をウォシャウスキー兄弟が大喜びしたという)、ご本人が表に出たがらない人なのでなかなか知名度が上がらないのが残念。いずれは日本でもメジャーになる日もくるだろう。そんな川尻善昭は、ここウン年、今作の続編を構想中だと伝えられる。企画が頓挫しないことを切に祈る!!

 
<どうでもいい追記>2010年も残りわずか。そんな中、トゥーラ・サターナ出演作「アストロ・ゾンビーズ」が日本でもDVD発売されるとの情報が!!出来はZ級だと思うけど、いま観たい映画の1本だ(→オタク以外、分からなくていいです)