其の74:「紅いコーリャン」の色彩美に酔え!

 先日、日本で一番グレートな俳優・高倉健主演作を公開した中国映画界の巨匠チャン・イーモウの記念すべき監督デビュー作!このブログ初の<中国映画>(私は何でも観るのだ)。彼は本当にいい作品を数多く作っているが、筆者はこの作品が彼のいまのところの最高傑作に思えてならない。初めて劇場で観た時は・・・本当に<鮮烈>だった!!

 1920年代末の中国・山東省の農村を舞台に<男女の愛憎劇>が戦争(敵はお約束のー日本軍です)も絡めて濃密に描かれてゆく(実は簡単には書けないストーリーなのよ)。いまやハリウッド映画にも進出したコン・リーがこの映画で主役デビューしています(確かに山口百恵にちょっと似てる)。

 とにもかくにも目を見張るのは、全面を<紅>で染め上げた映像の<色彩美>!主人公たちの<パッション(情熱)>、<逞しく生き抜くパワー>を象徴するかのようだ。イーモウの<色彩設計の妙>はよく知られているが(「菊豆」では紅と黄、「HERO<英雄>」では様々な色が場面別に使い分けられてる)、この1作目から既に全開である。 
 実はイーモウはチェン・カイコー監督(「さらば、わが愛 覇王別姫」、「始皇帝暗殺」)のカメラマンから出発しているのだが(後には「俳優」としても活躍!)、その辺りにも理由がありそうだ。
 ジャンルで言えば「悲劇」なのだが、日本軍との戦闘シーンの<躍動感>。ある意味アンモラルな男女の<設定>、小便をした壺の酒が「美酒」になったーという寓話的エピソードも含んだ<ストーリー>・・・どれもが絶妙にブレンドされ、その色彩と渾然一体となって映像芸術としての「映画」を堪能させてくれる。「デビュー作に監督の資質が出る」とはよく言われる事だが、まさに処女作にしてチャン・イーモウ恐るべし!といった趣きだ。