其の341:祝:艶笑コメディーは生きていた^^

 先日、「失われた映画」のジャンルとして艶笑コメディーを追悼したが・・・しっかり生き残ってました!だって最近2本も観たばっかりだし(で、どちらも面白かった)^^。まずはウディ・アレンの最新作「それでも恋するバルセロナ」。スペインはバルセロナを舞台に四角関係(男1:女3)とその顛末を描き出す。今時の映画雑誌は「ロマンチック・コメディー」とか表記しているが、ここまでHが絡むのはどう考えても艶笑コメディーだろ!


スペインにいる親類を頼ってバルセロナへひと夏のバカンスへと訪れたクリスティーナ(=スカーレット・ヨハンソン)とヴィッキー(=「プレステージ」のレベッカ・ホール)。そこで2人は、ひょんなことから<美術界の問題児>画家のフアン・アントニオ(=ハビエル・バルデム)に誘われ小旅行へ。その旅先でヴィッキーはアメリカにフィアンセがいるもののフアンに誘惑され、つい一線を越えてしまう。さらに旅行後にはクリスティーナとも関係を結ぶフアン。彼はヴィッキーを諭し、クリスティーナと暮らし始める。そんなある日、彼の元妻のマリア・エレナ(=ペネロペ・クルス)が突如家に戻ってきて・・・!?

 常識人で身持ちは固いものの、内心アバンチュールに憧れる「よくあるタイプの女性」と、好奇心は旺盛で何にでも手は出してみるものの、中味がないからいつまで経っても自分探ししている「よくあるタイプ」の女性に加え、情緒不安定でキレやすいというまたまた「よくあるタイプ」の3女性の中に、これまたよくある「お気楽なヤ●チン男性」を投げ込んでその化学反応を観察したのがこの作品。世間でゴロゴロしている<痴話話>の集大成といっても過言ではなさそう。当事者じゃない限り、端から見る分には「どうでもいい話」なので面白い(笑:アレン自身、色恋沙汰でいろいろあった人だからねぇ・・・自身の経験も多少は反映されてたりして)。

 「マッチポイント」、「タロットカード殺人事件」に続き、すっかりウディ作品の新たなミューズ(=女神)となったスカーレット・ヨハンソン。エロさとすぐ男とヤる設定は前2作と変わらず(笑)。彼女に比べればレベッカ・ホールはセクシーさが足らん分、お固い女に見えるから巧いキャスティングである。
 そのアメリカ勢に加えてスペインの名優にしてコーエン兄弟の「ノーカントリー」でおかっぱ頭の殺し屋を演じたハビエル・バルデムがヤリたいだけの前衛画家を好演。トム・クルーズの元彼ペネロペ・クルスは元妻役でキレた演技を披露(→これでアカデミー助演女優賞獲得)。レズシーンまで演じてるけど・・・ペネロペは本国の映画ではもっと凄いこともやってるから、これでオスカーならハリウッドの映画人はよほどスペイン映画を観ていないようだね(笑:ペネロペ的には自ら志願して今作に出演したから、本当にラッキーだったね)。

 以前は地元ニューヨークで映画作りを行っていたアレンだが(ランチは自宅で済ませてたそうな)「マッチポイント」、「タロットカード殺人事件」ではイギリス、そして今作ではスペイン(→サグラダ・ファミリア教会などガウディの建築物も見もの)と欧州に製作の場を移しているがー決して大作を作らないのがいいね。小規模映画で評価された後、ビッグバジェット与えられてコケた監督がこれまでどれほどいたことか(苦笑)!加えて今作は冒頭からかなりのナレーションがつくので「テレビじゃないんだから、ちょっとナレーション多いなぁ・・・」と思ったけど、最後まで観たら「結局のところ、この文章を言いたくてナレーション処理を思いついたんじゃないか!?」と思った。まぁ、皮肉が効いてるのでどうぞナレーション字幕もしっかり読んで下さい^^。余談だがヴィッキーが劇中友人と観た映画はヒッチコックの「疑惑の影」。これ、ヒッチマニアなら彼のベスト10に必ずや選ぶ傑作!ついでにこれも観て欲しいね(筆者はヒッチマニアでもあるので)。


 ぶっちゃけ「それ恋」はお上品ですけど(ベッドシーンはあっても女優の乳見せなし)、もう1つの「ライラにお手あげ」はすごいぜ!なんせ監督は「メリーに首ったけ」でキャメロン・ディアスに<ザーメン・ジェル>をつけさせた映画史上最狂の下ネタブラザー、ファレリー兄弟(ボビーとピーター)だ!ニール・サイモン御大の原案を基本設定のみ残し、大脚色した爆笑艶笑お下劣コメディー。主演は「メリー〜」以来となるベン・スティラーだぜ。これで面白くないわけないっちゅーの!

 お話は、以前の婚約破棄もあって結婚に気乗りしない40男(もちスティラー)が、ひょんなことから知りあったパツキングラマー女性ライラ(=演じるのは「ウォッチメン」のスウェーデン人女優、マリン・アッカーマン。乳出しあり)と周囲の後押しもあってゴールイン!ところがまともに見えた彼女は実は元ジャンキーで、仕事は無給のボランティア。おまけにセックスは超アブノーマルと、ことごとく主人公を失望させる。そんな折、ハネムーン先のメキシコで出会った女性(=「M:i:III」のミシェル・モナハン)に心魅かれ、既婚者であることを隠してデートし始めてしまう・・・。ちなみにベンの父親を演じているのは実父ジェリー・スティラー!ファンはその点も注意してね^^

 「それ恋」は「よくあるタイプの人々の集団恋愛劇」だったけど、今作もまぁ、結婚したことを後悔して他の人がよく見えてくるという世間じゃよくある話(笑)。若いうちは恋愛すると単純だから「=結婚」という考えに陥りやすいけど、所詮は他人同士が暮らすわけだから「よくよく相手の実態を知らないと悲惨なことになる」という教訓話と取れなくもない(笑)。

 今作の見所は「いかに女房を誤魔化して、他の女性とデートをするか?」に奔走するベン・スティラーの大ボケ演技と妻役マリン・アッカーマンのぶっとび演技!美人女優にどうやったら、こんな演技(・・・とても書けない)をやらせることが出来るのか?もしかしたらファレリー兄弟はダミーの嘘台本渡しておいて、全部現場で「閃いた!」とばかりに演技指導しているのかもしれない(笑:そんな訳はないだろう)。「ハリウッドで求められるお決まりのパターンの打破」が兄弟の創作の秘訣だから(下ネタに動物虐待、身障者ネタ・・・彼らにタブーはないのだ)それに少なからず同調する俳優陣を集めてるんだろうね、きっと(違ったらすまん)。

 終盤、<予想される展開がやっぱり起きたあと>もう一ひねりあり。で、エンドロールの途中にも爆笑の1エピソードが挿入されるので最後まで観るように!・・・こんなに面白い映画でありながら、日本では劇場未公開でDVDスルーとは(怒)。いつベン・スティラーアダム・サンドラーは我が国でブレイクするのだろうか(アメリカじゃ大人気コメディアンなのに〜)??