其の219:元祖イケメン?「太陽がいっぱい」

 本日の「SMAP×SMAPスペシャル」で往年の二枚目スター、アラン・ドロンが出演していましたが・・・まもなく72歳とは思えぬイケメンぶり(驚)!「美人は年とらない」と言いますが、いい男も年を取らないのかもしれない(笑)。本当は別の作品を予定していましたが後日にして(笑)ドロンの出世作太陽がいっぱい」(’60)を。これは「サスペンス映画」そして「青春映画」としても一級品!後年、マット・デイモン主演でリメイクされましたが(「リプリー」)やっぱりドロンの方がいいわ^^本人も番組内で自作ベスト5の1本に選んどりました(その他の4本は「太陽は知っている」、「山猫」、「暗黒街のふたり」、「高校教師」)。


 貧乏なアメリカ人のトム・リプリー(ドロン)は、大金持ちから放蕩息子フィリップ(モーリス・ロネ)を連れ戻すように依頼され、イタリアはナポリを訪れる。トムはフィリップと彼の婚約者マルジュ(マリー・ラフォレ)らと行動を共にするうちに、彼の傲慢な振る舞いに対して殺意を抱くようになる。そしてふたりでヨット遊びに出かけた時、トムはフィリップを刺殺!遺体を海に投げ捨てる。陸にあがったトムはフィリップになりすまし、金とマルジュを手に入れるのだが・・・。


 パトリシア・ハイスミスの原作小説をポール・ジュゴフと名匠ルネ・クレマン(「禁じられた遊び」、「海の牙」の人よん)が共同で脚色。貧乏であることの怒りや妬みを抱き、野心に憑かれてゆく青年像をいきいきと描き出した。クレマン的には当時、台頭していたヌーベルヴァーグ一派(ゴダールトリュフォーら)に挑戦した形(クレマンは心底、ヌーベルヴァーグの連中が嫌いだったそうだ)。


 面白いのは劇中、ドロンは2人を殺害するのだが、彼はその度にものを食べる(最初は果物、2度目はチキン)。これはルネマンが知り合いの警察関係者から「人は殺人を行うと猛烈に食欲が出てくる」という話を聴いて取り入れたもの。更に有名なドロンがフィリップのサインを真似て練習する場面(海外ではなにより本人のサインが大事)。こういった描写が作品にリアリティーを与えている。勿論、アンリ・ドカエのみずみずしいカメラワーク(=主人公の心情を見事に表現)、フェリーニ作品で知られるニーノ・ロータのテーマ曲(一度聴いたら忘れられん)が抜群である(日本ではこの曲、大ヒットしたんだけど海外ではいまいちウケなかったらしい。不思議だ)^^


 勿論、「キャスティング」も絶妙である事はいうまでもない。野心ギラギラの主人公はアラン・ドロン以外にもはや考えられない!モーリス・ロネがまた嫌な奴をさらりと演じているものだから、観客もいつしかドロンを応援する側となり、例の鮮やかな「どんでん返し」でブルーになる。ドロンは殺人犯なのに(笑)。ここまで犯人に感情移入してしまう作品もそうそうないのではないか(原作とはラストが異なるので、原作に近い内容が観たい方はマット・デイモン主演作を観てね)。
 かの淀川長治大先生は今作のドロンとロネの関係を「ホモセクシャル」と論じたが(解釈はラストの「どんでん返し」にも関わるのでここでは書けない)それを抜きにしても(苦笑)フランス映画を代表する傑作の一本であることは間違いない。ビバ、ドロン!!


 さて・・・先日購入した「ロッキー・ザ・ファイナル」のDVDでも観て燃えるかな^^