其の596:「ヘイトフル・エイト」に大興奮した!!

 3月になりました。この改編期に新番組を立ち上げるテレビマンさながら、超忙しいっす・・・。

 先日、クエンティン・タランティーノ監督最新作「ヘイトフル・エイト」を鑑賞しました。日本では<密室ミステリー>を前面に売っていますが(←おそらく宣伝会社が“西部劇”だと客が入らないと考えたのだろう。意図は理解するが)その辺りの要素は、ほ〜んのちょっとですから純粋にミステリー目当ての方は御注意あれ!でもそんなミステリー要素が薄くても映画はマジで面白かったですよ!!タラさん得意のバイオレンス&全裸あり(→残念ながら男の方。モザイクなしのブ〜ラブラ)のため<18禁>ですから、こちらもご注意を^^


 南北戦争終結からしばらく過ぎた、米・ワイオミング州の山中ー。1台の駅馬車が豪雪の中を進んでいる。乗っているのは賞金稼ぎのジョン・ルース(=カート・ラッセル)と、彼に捕えられた1万ドルの賞金がかかっている女悪党デイジー・ドメルグ(=ジェニファー・ジェイソン・リー)。彼はレッドロックの街へ彼女を連れて行き、絞首刑にするため敢えて殺さず駅馬車をチャーターして護送しているのだ。その道中に出会ったのが元北軍少佐の賞金稼ぎマーキス・ウォーレン(=サミュエル・L・ジャクソン)。馬が死んで立ち往生していたので通りがかったルースに助けを求めたのだ。ルースは自身とデイジーを手錠でつなげていたため当初難色を示したものの、最終的には同乗を許す。その後、ウォーレンと同じく馬に死なれて助けを求めてきたクリス・マニックス(=ウォルトン・ゴギンズ)も、自身が目的地であるレッドロックの新任保安官である事を理由に駅馬車に乗る事が出来た。
 猛吹雪の為、彼らはレッドロックに最も近い停車場「ミニーの紳士服飾店」で停車、嵐をやり過ごす事にする。店内にはミニーらが不在のため店を任されたというメキシコ人・ボブ(=デミアン・ビチル)の他、同じように足止めにあったというレッドロックの絞首刑執行人オズワルド・モブレー(=ティム・ロス)、物静かなカウボーイ、ジョー・ゲージ(=マイケル・マドセン)、そして元南軍のサンディ・スミザーズ将軍(=ブルース・ダーン)の4人がいた。駅馬車の御者O.B.(=ジェームズ・パークス)も含め計9人の男女の間にやがて思いもよらぬ事件が起こってー!!


 サミュエル・L・ジャクソンを筆頭にカート・ラッセルティム・ロスマイケル・マドセン、更にはブルース・ダーンら過去にタランティーノ作品に出演した豪華俳優達が集結した今作(これぞ<タランティーノアベンジャーズ>)。個人的にはオムニバス映画「フォー・ルームス」以来のティム・ロス参加が嬉しかったが❤。リアリティーを求めてスタジオ内のセットもわざわざ冷房入れて寒くする中で行われた彼らの好演は勿論のこと、タラ作品初出演のジェニファー・ジェイソン・リーのビッチぶり(&ボコられぶり)にも拍手!彼女も今後タラ作品で常連になる気がするナ^^

 映画好きな人はご存じの通り、今作は前作「ジャンゴ/繋がれざる者」(’12)の続編の意味合いでスタートしたものの、“脚本流失事件”が起こって激怒したタラが一度は製作中止を決めた経緯がある(その後、脚本の「朗読劇」を行い、観客のリアクションが良かったことで企画が復活した)。ホントに無事、映画化されて・・・良かった良かった^^

 “雪の中の西部劇”・・・といえば、このブログ読んでる方なら、傑作マカロニウエスタン「殺しが静かにやって来る」を連想するかと思いますが(違う??)・・・タラさんのイメージ的にはテレビの西部劇ドラマのいくつかと「遊星からの物体X」(主演、カート・ラッセル!!)なんだって(笑:この人らしい)。「物体X」と異なり、場所は南極じゃないけど、極寒の中で閉じ込められる状況になる点は確かに同じ!またデビュー作にして大傑作の「レザボア・ドッグス」<西部劇拡大バージョン>と観ることも出来よう。

 音楽を担当したのは私も大ファンのマエストロ、エンニオ・モリコーネ(ちなみに先の「物体X」もモリコーネが音楽を担当してる)!!タラの長年のラブコールが遂にかないましたな。タラ作品は選曲がいいので筆者も彼の作品のサントラは全て所有しているのだが・・・この「ヘイトフル・エイト」も即、買った!で、いまそのサントラ流しながら、この文章書いてる(笑)。冒頭からしてただならぬムードが漂うこの曲は・・・最高だね♪♪西部劇というよりはホラー映画っぽいけど(笑)。一部、御大が過去に作曲したものにちょっと似ていたりもするのだが・・・そこはあえてスルーしておく(笑)。先日、今作でモリコーネがオスカーを受賞したことも併せて書いておきます^^。あと特筆すべきは美術監督種田陽平を起用していること(種田さんは「キル・ビル」にも参加)。アメリカで西部劇作るのに、本場のアメリカ人ではなく、わざわざ日本人を起用するなんて・・・タラのセンスは素晴らし過ぎる。俳優陣も絶賛した「ミニーの紳士服飾店」のセットは要チェックで。

 少々、訳ありの8人が揃うまでの下りが長い気もするけど(実に上映時間168分!この辺りもタラが大好きなセルジオ・レオーネを意識しているのかもしれない)中盤以降、<ネタバレ防止>のポリシーがあるので詳しくは書けないけど、予想を大きく越える展開になって(マジ仰天した)、あとはどう展開するのかハラハラしながら観ていた。筆者はタラの現在までの最高傑作は「レザボア・ドッグス」だと思っていたけど、遂に2本目の大傑作をモノにしましたよ、タラさんは!これでアメリカと同じく、タラさんが拘った<70ミリ>のフィルム上映を観ることが出来たら最高だったと思う。日本ではもう70ミリフィルム上映出来る映画館がなくなっちゃったからねぇ・・・。この点は日本人として残念の一語に尽きる。

 
 余談だが、クエンティン・タランティーノは「10本撮ったら監督引退」を公言している。今作はカウント上、“8本目”としているから・・・残りあと2本しかない!!リュック・ベッソンみたいに10本撮ってもあっさり宣言を撤回して欲しい。