<其の809>久々のフィンチャー作品(喜)!!「ザ・キラー」短評

 11月になりました。2023年も残り2か月(マジで早い:怖)・・・!!

 

 筆者が好きな現役映画監督は何人もいますが・・・デヴィッド・フィンチャーもその内の1人で、彼の作品もデビュー作からリアルタイムで全て劇場で観てる(配信オンリーの「Mank/マンク」やテレビドラマシリーズは未見。でも彼の研究書「マインドゲーム」は買った)。その彼の“新作”「ザ・キラー」が日本で公開!!筆者が「ゴーン・ガール」を観たのが2015年だからーなんと8年も経ってる(マジか)!!ここしばらく仕事がハードで、体力的にはキツかったんだけれど、今作も劇場で公開したあと配信になってソフト化しないから・・・半ば気力を振り絞って映画館に行きましたわ(苦笑)。

 

 お話は一匹狼の殺し屋(=マイケル・ファスベンダー)がパリでの暗殺依頼をミスってドミニカ共和国の自宅に帰ったところ、仕事を失敗した代償として恋人が暴行されて入院していた。激怒した男は彼女に手を出した連中に復讐を開始するー。

 

 話自体はよくあるパターンだよね。「ジョン・ウィック」の1作目もこんな感じだし(フランスのグラフィックノベルが原作という事だが、筆者未読)。フィンチャーのブレイク作「セブン」アンドリュー・ケヴィン・ウォーカーが脚本を担当。「ジョン・ウィック」シリーズより登場人物数は圧倒的に少ないながら、章仕立てにしてフランス→ドミニカ→アメリカ・・・とポンポン場所を変えて飽きさせない展開にしてる。実際に各地でロケしたそうだから・・・お金かかってる^^

 これは個人的な推理ですけど→→→ビジュアリスト:デヴィッド・フィンチャーは元のグラフィックノベルの“タッチ”を再現する事に専念したような気がする。主人公のモノローグにあわせて構図、照明、編集・・・とビシビシ決まってるし。余分なエピソードがない一直線に進むストーリーゆえ、より絵作りを重視した気がしたんだよね~。

 最初のパリの安アパート内で主人公が暗殺する相手を延々待ち続けるシーンは・・・下手すると主人公同様、観客も少々飽きてくるんだけど(笑)、実は大量のモノローグで主人公の考え方やキャリアを観客に紹介する重要な一連。ここまでモノローグが多いのはフィンチャー初かもしれない(違ってたらごめん)。演じるマイケル・ファスベンダーが瘦せ型なので、ふと「ジャッカルの日」の主人公にダブって見えたわ。そういう意味で言えば、今作は<アクション・サスペンス映画>という部類に入りつつ、「殺し屋はつらいよ」という<お仕事映画>にも分類されるかもしれない(笑)。

 

 「大傑作!」とは筆者は言いませんが、久々にフィンチャー作品らしい映像(冒頭のスタッフロールもちょっと「セブン」を彷彿させる凝った作り)を愉しみました^^。無理矢理映画館まで行った甲斐はあったわ。

 

 12月公開予定のリドリー・スコットの「ナポレオン」も<劇場先行公開からの配信>パターンだから・・・体力的にパワーがなくても劇場に観に行かないとあかんな。ホントにホントにこのパターンがますます増えそうで困るな~。配信して少々時間経ってもいいからソフトも出してくれ~(願)!!

 

 

<其の808>アメリカ暗黒史「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」短評

 あっという間に秋めいて10月下旬となりました(その間、日本では有名人が相次いで亡くなった)。もう本屋では来年のカレンダーを売っていたりして・・・1年経つのが早いなぁ!!

 

 マーティン・スコセッシ監督最新作「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」を観て来ました。スコセッシ初の西部劇(ガンマンが決闘するようなベタなやつではない)にして、スコセッシ作品新旧の“顔”、ロバート・デ・ニーロレオナルド・ディカプリオが共演!これは映画オタクなら観るしかないだろ^^。

 

 1920年代のアメリカ・オクラホマ州。ここでは石油利権でお金持ちのオセージ族(=ネイティブ・アメリカン)に白人入植者達が群がっていた。戦争で負傷したアーネスト(=ディカプリオ)は仕事を求めて、伯父で牧畜業を営む町の有力者ウィリアム(=デ・ニーロ)の元に身を寄せる。運転手として働く中、オセージ族のモーリー(=リリー・グラッドストーン)と知り合い、お互い惹かれるようになる。だが町ではオセージ族とその関係者達が次々と不審な死を遂げていく・・・!

 

 これ実話なんですよね・・・(この映画の話を聞くまで筆者も初耳)。これぞ知る人ぞ知るアメリカ暗黒史のひとつ。ホント、白人はネイティブ・アメリカンに悪い事ばかりしてきたよなぁ!詳しい事件のあらましや結果、フラワームーンの意味ほか知りたい方は原作本を参照の事。レオ様(製作総指揮兼任)は当初、事件を捜査する方の役をオファーされたんだけど、アーネスト役を演りたいとの事でキャスティング変更されたそうな。

 なんせデ・ニーロとレオ様(過去に「ボーイズ・ライフ」で共演)だからねぇ~、悪人役は上手い。安心して観てられる(笑)。筆者的には終盤ちょっとだけだけどジョン・リスゴー(懐)と「ハムナプトラ」シリーズのイメージはなくなったブレンダン・フレイザーが出てたのは良かったかな。スコセッシもヒッチコックよろしく、俳優としてちょい出てる^^。

 映画観ていて一番感じたことは80歳にもなったスコセッシ(共同脚本も)がまだまだパワフルな事!制作に際し、リアリティーを追求するため事件のあった現地でも撮影&オセージ族のトップに協力を仰いで当時の様子を徹底再現。演出も突如として起こるバイオレンス描写は勿論、石油が湧き出た時のスローモーション、当時のニュースフィルムを思わせるモノクロ映像使用と要所要所に変化をつけ、少々中だるみした箇所もあったものの、上映時間206分(!!)を一気に見せきる。つまんない映画だと30分もしないで飽きるけど(笑)、こんな大作作ってもなお観客を飽きさせないとはスコセッシ、恐るべし!!実在した百合修道女を描いたポール・バーホーベンといい、近日「ナポレオン」を公開するリドリー・スコットといい・・・現代の80代監督は元気だな~(笑:でもマジで尊敬)。

 決して明るい話ではないし、スコセッシの集大成・・・とまでは思わないけど、レオ様のファンや映画ファン、歴史好きは観て損のない一作。

 

 今作も先行して劇場公開した後は<配信>されるそうで・・・(その為か、パンフレットが作られてなかった)。個人的には劇場でもやらない<配信オンリー作>よりは嬉しいけど、せめてソフトは出して欲しいんだよねぇ。先述の「ナポレオン」も今作と同じパターンみたいだし。配信観るの苦手な筆者にはキツい時代が来たのかも(汗)。

 

<其の807>「探偵<スルース>」再見&伝説のカルト映画「追悼のざわめき」初見

 ウクライナの戦争も終わらないのに、今度はイスラエルでも・・・(悲)。

ガンダム」じゃないけど・・・“人類はいつ戦いを止めることが出来るのか?”

 

 前にも書きましたけどミステリーファンとして「探偵<スルース>」(’72)のDVDが発売されていない我が国のソフト事情は・・・嘆かわしい限り。筆者は大昔に一度観たきりなので、改めて見直したい(細かいシチュエーションを忘れてる)・・・と考えていたところ、ようやく先日再見が叶いました❤内容が内容なので、ネタバレせぬよう書いていきます^^。

 

 イギリス・ロンドン郊外ー。著名なミステリー作家ワイク(=ローレンス・オリヴィエ)の大邸宅に呼びつけられた美容師のティンドル(=マイケル・ケイン)。ワイクはティンドルに自分の妻と不倫している事実をぶつける。正直に答えるティンドル。するとワイクは浪費家の妻に愛想が尽きた事、自分にも若い愛人がいる事を告白した上で、ティンドルに自宅金庫の宝石を盗んでいくよう提案してきた。宝石には保険が掛けてあるのでお互いに利益があり、盗品でも安全に売る方法まで紹介するとの事。不倫相手との今後の生活を考えたティンドルは了承し、ワイクに言われるまま宝石を盗む事にしたのだがー!?

 

 お~っと書けるのはここまで!これ以上は今後観る人の為にも書きません^^。ちなみにリメイク版(マイケル・ケインがワイク役演ってる!)は筆者未見。

 今作が名作として語り継がれている要素の1つ目が<脚本>。今作はアンソニーシェーファー(←この方、ヒッチコックの「フレンジー」の脚本も書いてる)の大ヒット舞台劇の映画化なんだけど、彼はこの映画版でも脚本を担当。お話は二転三転するんで乞うご期待^^!

 監督のジョゼフ・F・マンキーウィッツは以前、エリザベス・テイラーの「クレオパトラ」で破格の製作費を投じたものの大コケして、映画史上最大の大赤字を出した事でも知られているが(笑)、今作ではうま~く舞台を映画に“移植”。映像ならではの面白さを引き出している(今作が彼の「遺作」)。

 要素の2つ目が<出演俳優>。ローレンス・オリヴィエマイケル・ケイン、2大名優がバッチバチの演技合戦を繰り広げる!!元が舞台劇だけに台詞の量もハンパないんけど、2人の演技力がもの凄いので目が離せない。

 そして、最後3つ目が<美術>!担当したのは「007」シリーズで知られるケン・アダム。ど頭から出てくる<迷路の庭>に始まり、真っ白のジグソーパズル(どないやんねん)や大量のからくり人形、そして「アメリカ探偵作家クラブ賞」のエドガー・アラン・ポーの像(本物!?複製!?どっちなん?)他、遊び心に溢れたグッズが満載❤もっと細かくワイクの部屋が観たかった(笑)。

 

 21世紀の映画観客目線で観ると、、、もうちょいカットできたり、ちょっと長いな~と感じる部分もあるけれど(今の映画はテンポ早いからさ)、70年代の映画のムード、当時のイギリスの館の雰囲気も感じられる。ミステリーファン、どんでん返し映画好きには一度は観て欲しい作品。日本でも早くDVDかブルーレイ、出してくれ!!

 

 一方・・・タイトルは初公開当時から知ってはいたものの、良くも悪くもアブない空気を感じ、筆者の琴線には触れなかったのが日本映画「追悼のざわめき」(’88)。でももういいオッサンなので(笑)、若い時のようなショックは受けないだろうと思ってレンタルDVDで観賞しました(デジタル・リマスター版)。宣伝スチールに10代のカップルの場面がよく使われていたので、てっきり彼らが主人公かと思っていたらー観たら違ってた(笑)。

 

 大阪の廃墟ビルの屋上でマネキン人形と暮らす殺人犯の男をメインに小人症の兄妹、街を彷徨う10代の兄妹、女性の下半身そっくりの材木を引いて歩くホームレスが織りなすファンタジーといえばファンタジー、群像劇といえば群像劇、ストーリーもあるような、ないような、ないようであるような・・・(笑)。猟奇殺人、近親相姦に加えカニバリズム・・・テーマは愛(エッチ含む)、あるいは人間の生って事になると思うのだけれど、映画の要素を文字にするとアブない内容てんこ盛りの2時間30分!!石井輝男とはベクトルが異なる大カルト映画!でも映像はモノクロだし、予想よりグロくもエロくもなかったのでホッとした^^。でもダメな人には全くダメだと思う。

 監督・脚本は松井良彦(彼の映画の師は寺山修司)。制作に数年間要したそうだが、この映画の発想自体が凄い。昔のデヴィッド・リンチやクローネンバーグ以上!無名俳優がほとんどで、手持ちカメラのシーンやゲリラ撮影シーンが随所にあって、いかにも低予算のインディーズ映画だけど「たとえ何と言われようとも、この作品を最後まで創る!」という監督の執念が筆者には感じられた(もし違ってたらすいません)。

 こんなこと書くと関係者や作品のファンに怒られるかもしれないけど、またまた21世紀の映画観客目線で観ると、、、幻想的なシーンが多くて、ゴダールの映画より難解である事は事実。長回しほどでないにしろ、1カットが長~いところもあるので、もう少々編集で切ってもよかったかも。まぁ、でもこの長さは監督が求めたもの・・・。自分で脚本書いてビデオカメラで自ら撮影していた学生時代の気持ちが少し甦ってきたわ(苦笑)。

 

 筆者が観たデジタル・リマスター版は初公開時の16ミリフィルムと違って、映像のざらざら感はなかったし、音楽も版権の問題で差し替えられているので、公開当時に映画館で観た人とは似て非なるものかもしれないけど、、、個人的にはおぞましくも美しい、見てはいけないものをつい覗き見てしまったような・・・心が少しざわざわするような心持ちになる作品。ひたすらクリーンさを追求する令和のニッポンでは二度と作れない映画でしょう。決して筆者の好みの作品ではないけど、監督の創作姿勢には共感した次第(←筆者の予想が当たっていた場合)。興味のある方のみ、どうぞご覧下さい(但し、責任は一切取りません^^)。

 

<其の806>「沈黙の艦隊」&「ジョン・ウィック:コンセクエンス」短評

 10月に入って(2023年も終わりが見えてきたな~)、ようやく涼しくなってきました。「夏は死ぬほど暑い!」というのが、これからの“ニュー・ノーマル”になるんでしょうねぇ・・・。地球温暖化を食い止めねば!

 

 先日、久々に試写会行って「沈黙の艦隊」を観てきました。筆者は原作漫画の連載をリアルタイムで読んでいたし、単行本も全部買った大ファンなんだけど・・・実写版(以前、アニメ化されてた)は想定よりは悪くなかったけれど、予想通り、長大な原作の序の序で終わってた。映画は“壮大なオープニング”って・・・感じかなぁ。

 原作にないエピソードを入れてるのはいいんだけど、その分の尺で、ストーリーを進めて欲しいとも思ったし、終盤の潜水艦同士の戦闘が分かりにくいとか、上戸彩扮するオリジナルキャラの存在が中途半端とか、残念な部分も多々あったけど、あの原作を実写でやる、という心意気は買った。でもあと最低3本は映画作らないと・・・どうしようもない(苦笑)。なんとか続編が作られるよう期待したい。近年の漫画の実写化って、俳優を漫画に寄せる傾向があるけど・・・今作は誰も原作に似ていない、というのが画期的だと思った。いいのか悪いのか分からんけど^^。

 

 一方、劇場に観に行ったのは前作から4年、、、主演・製作総指揮キアヌ・リーブスのシリーズ第4弾「ジョン・ウィック:コンセクエンス」です(今年は「インディ・ジョーンズ」シリーズ、「ミッション:インポッシブル」シリーズが公開されてアクション映画ファンにはいい年になった^^)。今作では主人公が主席連合に反撃する為、ニューヨークの他、ヨルダンの砂漠に大阪、ベルリン、パリと世界中の大都市で様々なアクションを繰り広げていく・・・殺し屋業界も大変だね(笑)。

 キアヌのアクションも凄いけど(特筆すべきはパリの凱旋門周辺で繰り広げるドンパチのすさまじさ)、今作には真田広之ドニー・イェンが出演!!アジアのアクション映画のレジェンドが2人も出るなんて❤・・・「エクスペンダブルズ」みたいだな(笑)。真田さんの剣さばきは当然のことながら、ドニーさんの「座頭市」を意識した盲目の凄腕暗殺者キャラも要注目。

 

 大ヒット公開中につき、これ以上の詳細は避けるけど、アクションてんこ盛りでお腹一杯の169分(長っ)!筆者は満足しましたよ!やっぱりアクション映画は最高だ~っ(笑)!!

 最後に・・・エンドロールが終わった後にちょっとした<後日談>があるんで、最後の最後まで席を立ったらいけませんよ(マジで)!!

 

 

<其の805>たけしさんじゃない方の映画「首」(’68)

 何気に忙しく・・・間が空きました(デヴィッド・クローネンバーグの新作「クライムズ・オブ・ザ・フューチャー」を観る時間もなかった!)。もう9月も下旬だというのにー猛暑はいつ治まるんかいな??

 

 筆者も“構想外”の新作レビューが続いたので・・・今回は久々に過去の知る人ぞ知る作品をご紹介^^。

 森谷司郎(もりたにしろう:1931~1984)といえば「日本沈没」(’73)、「八甲田山」(’77)、「動乱」(’80)等の大作映画で知られる監督。ただ数々の青春映画も演出していたりする、あなどれないキャリアの持ち主だ。そんな彼が1968(昭和43)年に監督した作品が「首」。長年、ソフト化されていなかったものの、先日DVDが発売された。今秋公開予定の北野武監督最新作と全くの同名でややこしいが・・・このタイミングを東宝さんは、、、狙ったのかしら??

 

 第二次大戦中の昭和19年1月、茨城県ー。採炭業の男性が賭博及び闇物資横流しの嫌疑で拘束された。ところが程なく彼は取り調べ中に亡くなってしまい、警察は病死として処理する。被害者の雇用主から相談を受けた東京の弁護士・正木ひろし(=小林桂樹)は警察の対応の数々に疑問を抱き、死亡の原因は拷問ではないかと考える。東京帝国大学法医学の教授から「鑑定には頭部だけあればよい」とアドバイスされた彼は、周囲に反対されながらも墓地に赴き、埋葬されていた遺体の首を切断、都内で鑑定する事を決意するがー!?

 

 ・・・凄い内容なんだけど、これ実話の映画化です(世にいう「首なし事件」)!!戦後も反権力の弁護士として活躍した正木ひろし(実名で登場)の著書「弁護士」を名脚本家・橋本忍が再構成した(←橋本は以前にも正木弁護士が担当した「八海事件」を映画化した「真昼の暗黒」も手掛けてる)。「事実は小説より奇なり」というけど・・・この言葉は、この事件の為にあるような気もする。

 映画は主人公・正木ひろしを演じた小林桂樹の熱演が冒頭から光る。当初は「司法解剖さえしてくれれば、すぐ終わる事件」と楽観視していたものの、警察サイドが余りにもバッドな対応を続けた為、本腰を入れなければならなくなる主人公。そこから誰もが驚愕する作戦を決行する。演じた小林桂樹は事前に何度も本人に会った上で役作りをしたという。

 地元警察に目をつけられた正木は「尾行がついている」と噂される中、遺族の承諾をとったとはいえ、墓を暴くのも、死体を斬って持っていくのも全て犯罪行為!!それを百も承知の上で、警察や村人の目をかいくぐって死体を切断、都内に運搬(しかもSLに乗車)する一連の過程はサスペンス映画並にスリリング!!しかもさんざん苦労して持ってきた首が鑑定の結果、警察が言う病死の可能性もある訳で(そうしたら意味なし)。これはハラハラしたわ!!映画がカラーではなく、あえて白黒で撮られているのも、戦前ぽさを感じさせて効果をあげていると思う。「日本の黒歴史」に興味がある方には特にお薦めします^^。

 

 

<其の804>「リボルバー・リリー」を観た。

 酷暑の中、高校野球も終わりましてー。神奈川県・横浜出身の筆者としては地元の優勝は嬉しい限り。大会に関わった日本全国の高校球児、監督、ご家族、学校関係者の方々、本当にお疲れ様でございました!!

 

 映画ブログとしての本題。ずーっと新作映画を書いていたせいで、今回は迷いに迷って、危うく筆が滑って(いまではキーボードか)、若くして亡くなった天才・山中貞雄監督の「人情紙風船」とかを書きそうになって思いとどまった(笑)。このブログにはちょっと似合わない作品だよね!

 で一転、最近忘れられてそうなハワード・ホークス監督辺りを考えてんだけど・・・ひょんなことから行定勲監督の新作「リボルバー・リリー」を観たので、ネタバレしない範囲で、今回も新作レビューです(申し訳ない)!

 大正末期の東京を舞台に、かつて諜報機関で凄腕暗殺者だったヒロインが訳アリ少年を救う為、陸軍に追われる事態になるお話。綾瀬はるか他豪華キャストと、行定さん初のアクション映画という事で話題作だとは思うのだがーSNSではめっちゃ低評価。興行成績も関係者の予想を大きく裏切りそうな気配・・・。このままでは<ボロクソ叩かれた上に大コケした映画>として「大怪獣のあとしまつ」やこの間の「東京オリンピック」のラインに入りそうな気配だ(近い記憶で書くならば「聖闘士星矢」実写版もあるけれど、あれはアメリカ映画)。

 「冗長」、「脚本、演出が酷い」、「綾瀬はるかのファッションショー」ほか様々な意見が溢れてて、ハードルをめっちゃ低くして観たのですが・・・想像していたよりは良かった(笑)。筆者は映画館行くようになって半世紀になるけれど、今作を遥かに凌ぐ駄作をこれまで何十本も観てるわ(爆笑:でも本当です)!

 原作未読なので、どう脚色したかはわからないけど、ストーリー自体は悪くない。ただ基本設定は「グロリア」だよね!誰も言わないけど(苦笑)。それにアクションシーンもペキンパーの「ワイルドバンチ」やかつての西部劇(マカロニ含む)他で観たようなシーンがちょいちょい入ってくる感じ。行定さんも事前に絶対、ジョン・ウーとか何本かは参考に観た映画がある筈^^。

 「女優を綺麗に撮る」は映画演出の大前提なので、綾瀬はるかのファッションショー化でも、それはそれでいいと思う。漫画のキャラと違って、毎日同じ服装で過ごしてる人はいない(笑)。彼女のアクションも申し分なし^^。

 今作でいわれる「冗長」との指摘→→→これは“アクション映画としてのリズムが悪い”という事に尽きるんじゃない?「インディ・ジョーンズ」や「ミッション:インポッシブル」とかを思い出してほしいんだけど、アクションシーンは人間ドラマの部分とはテンポを変えるんだけど(大量のカットを編集で細かくつなぐ)、アクションもドラマ部分も割と全体的に同じ感じで進む“行定調”じゃない。観客は「アクション映画」を観る前提で来てるので、よほど凝った構成じゃない限り(今作も少々謎っぽい要素もあるものの、割と早い段階であっさり台詞で解明される)、同じトーンで上映時間2時間越えると、あきてくるよね。アクションもそんなにハラハラドキドキする感じじゃないし。

 

 これまでの「日本映画の大作=時代劇、戦争映画」という邦画製作者のベタな思い込みを今作で破って欲しかったけどね・・・。日本映画の発展の為にも、これにめげず少女漫画の映画化は減らして、アクション大作やSF大作の実写化にじゃんじゃんチャレンジして欲しいと個人的には思います!

 

<其の803>また新作映画更新!「クエンティン・タランティーノ 映画に愛された男」

 酷暑の中、お盆も過ぎ・・・コロナの増加と水不足が懸念される今日この頃。

 

 本当は昔の映画を書きたくて色々考えたんだけど(ハワード・ホークスとか)、結果はまたまた新作(めんご)。ドキュメンタリー映画クエンティン・タランティーノ 映画に愛された男」(’19)です。余り好んでミュージカルとドキュメンタリー映画は観に行かない筆者だが・・・モリコーネタランティーノならば観に行かない訳にいかない(笑)。現在、世の中的にタランティーノをどれだけの人が知っているのかは、筆者は分からんけど(苦笑)。

 

 日本では先週から上映されているけど、製作年が2019年なので、取り上げられているのはデビュー作の「レザボア・ドッグス」から8作目の「ヘイトフル・エイト」まで(9本目はラストの方で撮影風景がちょこっと紹介されてる。オムニバス映画「フォー・ルームス」については言及なし)。彼の映画に出演したスター達と関係者のインタビューをベースに構成。存命しているのにタランティーノ本人のインタビュー映像がないのは、このテのドキュメンタリー映画としては珍しい。

 サミュエル・L・ジャクソンティム・ロスマイケル・マドセンクリストフ・ヴァルツゾーイ・ベルほか<常連組>がちょいちょい興味深いエピソードを披露してくれているが・・・ブラッド・ピットレオナルド・ディカプリオはスター過ぎてインタビュー無理だとしても、やっぱりタラさんが監督デビューするにあたって貢献したハーヴェイ・カイテルや「パルプ・フィクション」で復活したジョン・トラヴォルタ辺りの発言は聞きたかったなぁ!

 <監督作品>を中心にインタビューが進むので、タラさんが生まれた家庭環境とか成長過程については説明なし。有名になってから(破局したものの)某女優と交際していたとか、いついつ結婚したーとかのプライベート話もなし。勿論、タラさんの<負の部分>→「キル・ビル」撮影中、ユマ・サーマンが自動車事故を起こした話(映像あり)や彼の映画のプロデューサー:ワインスタインのセクハラ&逮捕についても触れられている。

 

 当たり前だけど、あくまで“ファン向け”の作品だね。「引退する」と公言してる監督作10本目までの“つなぎ”になったような、ならないような・・・(いつからクランクインするかも不明)。筆者は今作観て映画館から帰宅した夜、DVDで2本ぐらい観直したわ^^。ファンはただ次回作を待つ&引退撤回を期待するだけ。蛇足ながら、今作のパンフレットは作られていなかったー残念。

 

 “パンフレット”と言えば・・・先日ようやく発売された「君たちはどう生きるか」のパンフを購入。ところが劇中写真が大半で中味がすっかすか!期待していた誰がどの役の声を演っていたのか記載なくて分からずじまい・・・。頼むわぁ!!