其の82:フェリーニの隠れた超大作「サテリコン」

 一般的にフェデリコ・フェリーニ監督といえばイタリアーひいては世界的な<巨匠>であり、「道」や「甘い生活」他で知られているが、この「サテリコン」ははっきり言って<エログロ>である(笑)。筆者は同じ<エログロ>でも、やはりイタリア出身のパゾリーニによる「ソドムの市」はダメだが(「ス○○ロ」はあかん)、この「サテリコン」は好きだ(笑)。
フェリーニのイマジネーション溢れる真の大作だと思う。まさに豪華絢爛!

 紀元前のローマ。青年エンコルピオは、友人アシルトと美少年ジトンを賭けて争い、その勝負に敗れる。失意の彼は街の有力者を訪ね、酒池肉林の宴に参加。ますます自身の快楽の追求に拍車がかかっていく・・・。

 古代ローマ(悪名高き皇帝ネロの治下!)の詩人ペテロニウスの原作(その大半は失われ、残された部分は全体の1割程度といわれている)をフェリーニが例によって自在に解釈し、例によって様々なエピソードをつなぎ合わせる構成をとっている。
キリスト教」以前のローマ人の退廃ぶりを同性愛、女装、殺人、人肉食ほか、人間が考えうるありとあらゆる背徳行為・変態行為がまざまざと描かれる。内容だけ書くとマルキ・ド・サドの小説のようだ(笑)。

 これまた例によってフェリーニは「チネチッタ」スタジオに巨大なセットをいくつも建築。多数のエキストラを動員し「ハリウッド史劇」とは異なる歴史絵巻を展開する。
史実とは異なる部分も多々あるだろうが、人間のおぞましい程の退廃ぶり・放埓・欲望の数々がフィルムに焼付けられており、その<映像の力>に圧倒される。

 内容が内容だけに公開時は大ヒットーとはならなかったそうだが、ベトナム戦争で疲弊していたアメリカでは<ヒッピー世代>に大いに受け入れられたそうだ。
サテリコン」で描かれる<自身の欲望と快楽のみを追求する人間たち>に、いまの日本人の姿を見るのはー筆者だけであろうか・・・。