<其の811>たけしさんの方の映画「首」短評

 今年も残り1か月(早っ)!今年も仕事ばかりで何もしなかったけど・・・世界は色々あったなぁ・・・。2024年はどうなるんだろうか?

 

 6年ぶりとなる北野武監督作(もっと書けば原作、脚本、編集、主演兼任)「首」を観て来ました。製作費15億円(KADOKAWA夏野剛社長談)の北野作品最大級の大作ですが・・・あわや“お蔵いり”の事態(KADOKAWAと揉めた)と噂されていたので、無事公開されて良かった良かった^^!賛否あるようですが絶賛公開中という事でサクッと書きます。いつもの様にネタバレなし!

 

 天正6年(1578)ー。荒木村重(=遠藤憲一)が織田信長(=加瀬亮)に謀反を起こし、翌年、村重は城から姿を消した。信長は羽柴秀吉(=ビートたけし)や明智光秀(=西島秀俊)ら家臣を集め、自身の跡目相続を餌に村重の徹底捜索を命じる。秀吉は弟の秀長(=大森南朋)、軍師・黒田官兵衛(=浅野忠信)と策を練り、千利休(=岸部一徳)の配下で元忍者の芸人・曽呂利新左衛門(=木村祐一)を使って村重探索を指示する。その頃、侍に憧れる茂助(=中村獅童)は戦に参加する為、家族を捨てて村を出るが・・・!?

 

 「本能寺の変」を題材にしてますけど、大半の観客の予想通り<戦国版「アウトレイジ」>ですよ!謀略、裏切り、暴力、そして衆道・・・。通常の時代劇では描かれない、たけしさんが考えるドロドロした人間関係と世の中を描く“リアル戦国絵巻”。「その男、凶暴につき」で犯人を追いかけたものの、走り疲れて歩くという“リアルな刑事”を描いたたけしさんらしい。筆者もこの発想には賛成。実際のところはもっと凄いと思うけど。

 やっぱり一番印象に残るのは加瀬亮演じる信長が・・・完全にガイキチ(笑)!テンション高くコテコテの尾張弁で叫び続け、パワハラという言葉なんぞ軽~く越える超バイオレントなクレイジーキャラ。居城(←映画には出てこないけど女人もわんさかいた筈)の、しかも昼間のオープンスペースで小姓を掘りまくるシーンは爆笑した(戦場じゃないのに)。戦国武将の男色話は史実通りだし、たけしさん的にも出演した大島渚監督作「御法度」の影響もありそうだ。いろいろやらされた加瀬亮は本当に大変だったと思うけど、彼になんらかの助演男優賞が与えられる事を希望する^^。ちなみにたけしさん自身とキム兄(原作小説より曽呂利の比重は大分小さくなってる)の演技はーいつも通りだったような気が・・・(笑)。あと<黒人初の侍>といわれる弥助(=副島淳)が登場していた事も書いておく。あんまり、この時代を扱った作品で彼が出てこないから。

 映画のキャッチコピーのひとつに<構想30年>とあるが・・・数字自体は別としても、アイデア自体は「ソナチネ」の頃に思いついたそうで、平成10年に出版された新潮45別冊「コマネチ!ビートたけし全記録」内で今村昌平監督との対談中にも「お金がかけられれば、やっぱり秀吉をやりたいな。」との発言もある。自ら小説も書いているし、今作がたけしさんの中で相当熟成された企画である事は間違いなく、合戦のシーンも迫力があって、巧く演出&編集していると思った。

 

 タイトル通り(!?)、いろんな人の「首」がスパスパ飛ぶので、女子ウケしない作品だと思うけど(笑)、ちょいちょい笑えるところもあって筆者はかなり楽しめましたよ。北野作品常連さんから初参加の方々まで「本番1回」撮影は緊張の連続だったろうけど、皆好演していたし。次回作は6年も待たずに・・・公開してほしいなぁ(祈)!