其の433:新作レビュー2発!

 ・・・超多忙につき、命削って映画観てる(苦笑)。観たいものほど単館公開だったり、人気なくて2週間ぐらいで打ち切られそうなものばかりなので・・・。今回は、そんな映画を2本紹介!勿論、上映中の作品につき、内容は長々書かないことにします(勿論、ネタばれなしで^^)。


 まず最初は第61回カンヌ国際映画祭で審査員特別グランプリを受賞したイタリア映画「ゴモラ」。ウルトラマンに出てきた怪獣のことではありません(笑)。ナポリ周辺を拠点に暗躍する犯罪組織カモッラの実態を描いた作品(かのアル・カポネもカモッラの一員だったとか)。これ2年程前に雑誌で記事を読んで以来、日本での公開をずっと待っていたのよ。ところが・・・。

 映画は5つの物語(組織に入った少年、「スカーフェイス」のアル・パチーノに憧れるヤンキーコンビ、構成員に手当を分配する男、組織に隠れてバイトで中国人に裁縫のノウハウを教える男、産業廃棄物の不法投棄に従事する男)がシャッフルされて進行していく「パルプ・フィクション」をより複雑にしたような構成。観ていくうちに分かるようになっていくけど・・・何の説明もないし、おまけにドキュメントタッチなものだから、誰が組織のメンバーで、誰がカタギなのかしばらく分からなかったゾ(苦笑)。

 カモッラに“潜入”して執筆したロベルト・サヴィアーノの「死都ゴモラ」が原作(サヴィアーノは今作の脚本にも参加)。ちなみに“ゴモラ”とは「旧約聖書」にある、人類の余りの堕落ぶりに怒った神が滅ぼした街、ソドムとゴモラに由来する。サヴィアーノは本を書いたことで2006年より組織から殺害予告を受け、08年にイタリアを出国するハメになったそうな(怖っ)。

 監督&共同脚本はマッテオ・ガローネ。この御仁、あくまで組織の活動の一端をリアルに見せることに終始しているので、観客は登場人物の誰ひとりにも感情移入することもなく、状況を“俯瞰”で見届けていくしかない。欧州の人なら何となく知っていることなのだろうけど、東洋の一島国である日本人が観るには、もうちょい、分かりやすくないと・・・というのが正直な感想。「ゴッドファーザー」のような格調、「グッドフェローズ」のような娯楽性も一切ありまへん。“勉強”として観た方がよさそうな作品でした。

 ちなみに作品には元構成員も出演しており、公開後に出演俳優の一人が指名手配中のカモッラの一員であることが判明。結果、逮捕されるというオチもついた(チャンチャン♪)。



 続く2本目はSFテイストのサスペンス「ミッション:8ミニッツ」。邦題は表記からしトム・クルーズの某人気シリーズのパクリばればれだが(笑)この映画のコピーが「警告:このラスト、映画通ほどダマされる」。そこで「じゃあ、ダマしてもらおうじゃね〜か〜!?」とただでさえ少ない睡眠時間を更に削って観にいったのだが・・・。

 時は現代。シカゴ近郊で乗客全員が死亡する列車爆破テロ事件が発生。次の大規模テロを懸念した当局は、米軍のヘリパイロットのスティーブンス(=演じるのは「ゾディアック」のジェイク・ギレンホール)に“ソースコード(これが原題)”と呼ばれるマシンを使って、犠牲者の事件発生8分前の意識に入り込んで犯人を探す極秘ミッションを与える。スティーブンスは、何度も何度も繰り返し爆発を体験しながら、次第に真相に迫っていくが・・・。

デジャヴの設定は、そんなに目新しいものじゃあないけど、お話自体はものすごく面白そうじゃない。で、このテのパターンは当然、“驚愕の真実&大ドンデン返し”を期待する訳だが・・・なんと、それがなかった!!このオチじゃ「映画通ほどダマされる」と言われても、ダマされないままでエンドだぜ・・・(苦笑)。

 監督はデビュー作「月に囚われた男」が高く評価されたダンカン・ジョーンズ。この人、あのデヴィッド・ボウイの息子!2作目となる今作、先の日本のコピーさえ忘れれば、演出は手慣れているし、映画自体も決して悪くはない。一説によると、“あのラスト”は脚本にないもので、監督自ら提案して付け足したそうな。筆者的には、あのラスト前で終わらせた方が、暗いんだけど観客に静かな余韻を与えたような気もするけど・・・ダンカンはきっと、こういうラストが好みなんだろうね^^

 筆者みたいにバリバリのサスペンス・ミステリーを期待すると、少しかっくんだけど(あと邦題を「8分間探偵」とかにしてたら、みんなコメディだと勘違いしただろう)映画自体は非常に面白くて“いい映画”。下手な邦画観るより、こちらの方をお薦めする!

 
 ・・・って、これ書いてる内に分かった!もしかすると<映画通ほどダマされる>というコピーは→→→意外な真相&大ドンデン返しがない、っていうことを暗に示していたのかも(そんなわきゃないか)!?