其の378:イタすぎる青春群像「ヒーローショー」

 超多忙の中、「ヒーローショー」を観た(井筒和幸監督、監督生活35周年おめでとう御座います)。予告編観たときから「これは観よう!」と思ったのだが、いや〜面白かったわ^^!期待していたティム・バートンの「アリス・イン・ワンダーランド」は序盤、余りのテンポの悪さに寝そうになったけど(苦笑)これは期待通りの面白さだった。但し<15禁>なので、暴力描写が苦手な人&世のダークサイドから目をそらす人は観ない方がいいだろう。筆者なんかは時々笑っちゃったりしたんだけど、他の観客たちは誰も笑ってなかったなぁ・・・(苦笑)。


 お笑い芸人の卵にして、何をやっても中途半端なユウキ(=ジャルジャル福徳秀介)は、元相方の先輩・剛志と再会。彼から「ヒーローショー」のバイトを紹介される。ある日、バイト仲間でヒーロー役のノボルが剛志の彼女を寝取ったことから、剛志とノボルはショーの最中、仕事を忘れて大バトル!怪我を負った剛志はヤンキーで暴力団の構成員でもある鬼丸兄弟に助太刀を依頼、嫌がるユウキも巻き込んでノボルや友人ツトムを痛めつけ大金を要求する。そこでノボルとツトムはツトムの兄・拓也に相談。すると拓也は自衛隊上がりの配管工・勇気(=ジャルジャル後藤淳平)に連絡し、金を払うふりをして逆襲にでた。そんな中、半死半生ながら鬼丸は逃亡したものの、ノボルが暴行の果てに死んでしまう!「殺人」を犯してしまった彼らの運命は!?

 井筒和幸、3年ぶりの最新作はどシリアス!上記のストーリーラインも男性なら「ありそうだな〜」と思わず納得するのではないか。筆者的には女性を主人公にした携帯小説の<不幸のスパイラル(→レイプ、中絶、ドラッグ、難病)>より、こちらの<不条理な暴力の連鎖>の方がリアルだと思った。喧嘩に負けた相手が仲間とか先輩連れて仕返しするなんてのは、学生時代によくあった&聞いたことだし(勿論、負けたそやつは全然男らしくはないのだが)。お話がリアルな分、暴力描写も超リアル!確かにこれは・・・15禁にもなるわ(井筒監督自身、「リミットを決めずにとことんやろうと思った」とコメント)。善が悪を倒す勧善懲悪の代表でもある<ヒーローショー>というタイトルが皮肉だ。

 吉本興業が出資している絡みもあって、主演は吉本所属のジャルジャルのふたり。監督はこれまでも「ガキ帝国」で紳助竜介、「岸和田少年愚連隊」ではナインティナインを主役に起用しているが、本人曰く「これまでは吉本からのプッシュで起用していたが、今回は自分で候補の中から選んだ」とコメント。その期待に応えて(もっとも最初2人は「どっきり」だと思ったらしいが)熱演!福徳は今時のヘタレな若者(→夢はあっても大して努力せず「妹ゲーム」で癒されてる:笑)を巧く演じてるし、「爆笑レッドシアター」ではどう見ても武闘派に見えない後藤が、年上の彼女(=ドラマ「名探偵の掟」の婦警役、ちすん好演♪)と平凡な生活を夢見ているものの凶暴性を秘めた若者になりきっていて良かった^^。約2ヶ月半(リハ&ロケ)、スタッフとキャストはアパートを借り切って合宿生活を行ったためジャルジャルの2人は、撮影中、ここから都内の仕事に通ったそうだが、苦労の甲斐はあったのではないか。
 この2人は物語の中盤以降、行動を共にするんだけど(ネタバレ防止につき、詳細は書かないけど)同じ<ゆうき>という名前を与えられつつも、対照的な人物として設定されているのは、作劇上かなりベタで分かりやすい(→誉めてます)。
 井筒監督は「(観た人が)ショックを受けて2、3日家にひきこもるぐらいになってほしい」と完成披露試写会の時語っていたが(監督はニューシネマがお好きのようだから、その影響も多いにあると思われる)ー筆者の世代から観ると登場人物たちの言動はかなり短絡的で「ここまでやったらダメだろ!」とか「普通、ここまでやるか!?」と多々思ったがーいまの若者たちはこんな感じなんだろうと思う(異常にゲームに熱中してるとか)。勿論、「殺人」を犯してしまうのは予想外であり、集団心理の結果ではあるのだが、どうすることも出来ない。安易な結末をつけず、登場人物たちの身に更なる不幸な事態が起こるであろうことを予感させる終わり方もグー!劇中のユウキの台詞「もう一度生き直させてくれよ!」の叫びは事件に関与した登場人物全ての願いだろう。エンドクレジットで流れるピンクレディーの「S・O・S」が彼らの心理状況を代弁しているかのようで意味深且つ絶妙の選曲。筆者はDVDが出たら、最低もう1回は観たいと思っている。是非、若い人(それも男子)に観てほしい一作!!
 
 <追記>ハリウッドの反逆児、デニス・ホッパーが死去。彼も若い頃は色々あったけど、最後は平穏に生涯を終われて良かったのではないだろうか。次回は追悼で出演・監督作「イージー・ライダー」でも書こうかしら!?大名作だから、ここで書く必要も余りないだろうし、今更といえば今更なんだけど(・・・よ〜く、考えマス。多分、書かないだろうけど)。