其の314:古き良き時代の恋愛劇「情婦マノン」

 「チェ2部作」の後半、「チェ 39歳別れの手紙」を観たのですが・・・前作より時間のシャッフルがなくなった分、シンプルで観やすいのだけれどゲバラを知らない観客の為への配慮は今回も皆無でした。
 前作はキューバ革命が成立してハバナ入場を目指すところまででしたが、今回はもう冒頭(1965年10月)からゲバラキューバにいない!で、前妻との離婚&再婚(=再婚相手役は前作で女革命戦士に扮した「そして、ひと粒のひかり」のカタリーナ・サンディノ・モレノ)のお話もコンゴ内戦に介入したエピソードもまるっきりなし!じわじわとボリビアで消耗してゆくゲリラの指導者ゲバラが描かれる。
 まだ「1」は市街戦とかもありましたが、今回の舞台はひたすら山の中!で、演出にメリハリがないから・・・隣のおじいさんはすぐに寝に入ってた(苦笑)。BGMもほとんどないし・・・寝ても致し方ない。
 監督のスティーブン・ソダーバーグは商業映画デビュー作「セックスと嘘とビデオテープ」(’89)でいきなりカンヌ映画祭パルムドールに輝いた才人ではあるが、第2作「KAFKA/迷宮の悪夢」(’91)が大コケ。その後も長く停滞が続いたがジョージ・クルーニー主演のクライム・アクション「アウト・オブ・サイト」(’98)でようやく浮上。00年の「エリン・ブロコビッチ」とベニチオ・デル・トロも出た「トラフィック」でようやく完全復活した御仁。以降、オールスターキャストで「オーシャンズ」3部作を作ったのは記憶に新しいところ(=回が進むたびにストーリーがなくなっていったけどね)。
 そんなソダちゃんは「トラフィック」から変名で撮影も兼任するようになりましたが(「プロのカメラマンと違ってこだわりがない分、手早くガンガン撮れる」からだそうな)今回も勿論、撮影は彼!「REDカメラ」というデジカメながらフィルムの質感が得られる最新カメラを駆使していますが・・・あまり手ブレし過ぎるのもいかがなものか(=わざと手持ちでセミ・ドキュメント感を狙っているのは分かるけど)。
 ボリビアでのゲバラを史実に忠実に描くことに重きを置いた分、「映画的興奮」はなかったっス。力作ではあるものの・・・ゲバラ通やファン以外にはつらい出来でした。またソダちゃんは低迷するかもな(苦笑)。
 ただ、前回よりは展開が時系列に沿っている分、おいてけぼりはないし、「ラ★バンバ」や「ヤングガン」のルー・ダイアモンド・フィリップスや「ボーン」シリーズのマット・デイモンとか知ってる顔もちらっと出るので「ウォーリーをさがせ」状態で観る分にはいいかもしれない^^


 その点、傑作サスペンス「恐怖の報酬」や「悪魔のような女」(シャロン・ストーン版じゃないよ)で知られるフランスの巨匠アンリ=ジョルジュ・クルーゾーの「情婦マノン」(’48)は分かりやすくていいね^^これ長らくビデオも出なかったと記憶しているが、先日(といっても昨日、今日の話じゃないけど)ようやくDVDが出たというわけ。

 プレヴォーの有名古典恋愛小説「マノン・レスコー」を戦後のパリに舞台を変えて翻案(そういえば昔、日本でも烏丸せつこで「マノン」やってたね)。奔放で移り気な女マノンー要は<ファム・ファタール(=運命の女)>ものーに振り回される主人公の男。
 よくある話である分、現代にも通じる普遍性がある。ちょっと前までは「犯罪の影に女あり」というフレーズもあったし、所詮<人間の本質>なんて太古の昔から全然変わってない(苦笑)!で・・・なんといっても、有名なあのラスト・シーン!!これも超有名作なんで、詳しく書くのは野暮というもの。

 作られた時代が古いだけに「映画、映画」してるけど・・・やっぱりクルーゾー(=警部ではない)はうまい。マノンを演じたセシル・オーブリー(=肉感的!)も一世一代の名演技を披露している(ってゆーか、これだけ)。
 チャップリンの「黄金狂時代」とかエイゼンシュタインの「戦艦ポチョムキン」(=モンタージュ理論!)同様、勉強としてでもいいから、たまには若い人にも古い映画を観て欲しいと思う今日この頃・・・です。


 <どうでもいい追記>先日、試写会でユマ・サーマンの新作「ダイアナの選択」を観た。これ、一応はサスペンスの範疇に入ると思うんだけど・・・アン・ハサウェイの新作「パッセンジャーズ」同様、とんでもないアンフェアなオチが(怒)!!!もう宇宙人とか●●とか××(→ネタバレ防止の為、伏せます)オチは全面禁止すべきだ。
 どうも試写会では「地雷」を踏んでるよね・・・。いくら無料で観てるとは言っても時間見つけて、交通費使って試写室に行ってるんで書かせて貰いました。でも自腹切って「少林少女」とか「ICHI」観て自爆するよかマシかも(笑)!?