其の243:これこそ本当に泣ける映画!「シンドラーのリスト」

 昨夜放送の「スマステ」の企画「泣ける洋画ベスト30」で1位に輝いたのが、かの「タイタニック」!当時リピーターも続出したこの作品だが「ディカプリオ、死んじゃうの〜」・・・って、これどう見ても「ロミオとジュリエット」じゃない(監督のジェームズ・キャメロンも認めてる)。みんな、シェイクスピアの原作を知らないのかしら(=知ってればオチはミエミエ)?筆者は絶対に1位には選ばないなぁ(泣いた方、ごめんなさいね)。
そんな筆者が泣いた洋画と言えば「昼下りの情事」や「ビッグ・フィッシュ」、そして「シンドラーのリスト」あたりとなる。ベスト30に「シンドラー〜」はランクインしていたけど(「ひまわり」が入っていなかったのは意外だったが)、あのクライマックスで劇場全体が同時にすすり泣きに包まれた!30数年、映画館に通う筆者だが劇場で全員がすすり泣いた経験は(今のところ)この1度しかなく・・・印象深い。


 アカデミーも獲った超メジャー作なので(=実話)粗筋は簡単にします。ナチに侵攻された第二次大戦下のポーランド。ドイツ人実業家オスカー・シンドラーリーアム・ニーソン)は一旗揚げようとクラクフの街を訪れる。軍の幹部たち(レイフ・ファインズほか)を買収して取り込み、安い賃金で使えるユダヤ人を都合して貰う為である。こうしてシンドラーユダヤ人会計士(ベン・キングズレー)ほかを巧く使って工場経営に乗り出した。一躍、富を手に入れ意気揚々のシンドラーであったがナチのユダヤ人に対する余りにむごい非人道的扱いを目の当たりにし、彼の中で何かが変わった。やがて彼はユダヤ人を守るべく奔走する・・・。


 監督は誰もが知るヒットメイカー、スティーブン・スピルバーグ(=ユダヤ系)。82年にブッカー賞を受賞したトーマス・キニーリーの同名ノンフィクション小説の映画化権取得後、約10年間、自らの精神的熟成とよき脚本の完成を待ってから今作の製作に取り組んだ。自身の演出料は返上、「ジュラシック・パーク」の後処理もしながら今作の撮影(実際にポーランドでロケ)を行った当時のスピルバーグの執念と情熱には並々ならぬものが感じられよう。


 ご存知の通り、モノクロ(ラストと一部パートカラー。黒澤の「天国と地獄」の引用演出あり)で時に淡々と、時にセミ・ドキュメントタッチで進行する今作。スピルバーグはこの当時、既に「娯楽路線」と「シリアス路線」を使い分けていたが、彼の作品のほぼ全てをリアルタイムで観ていた筆者からするとこの「シンドラーのリスト」は骨太の内容&堂々とした巨匠の風格をも感じさせ「彼(=スピのこと)も大人になったな〜」と感じた。勿論、ナチスが心底恐ろしいのは言うまでもない!


 ・・・で、クライマックス(ネタバレ防止のために書かないけど)で劇場にいた皆と共に泣かされ、スピルバーグは今作で見事(ようやく)アカデミーを受賞!名実共に<トップ・ディレクター>にのぼりつめた(彼と比べると「タイタニック」以来、新作撮らないキャメロンはあかんね)。「ダークマン」演ってたリーアム・ニーソンレイフ・ファインズ(弟も俳優)が世界的に注目されたのも今作からである。
 「ナチス統治下で600万人のユダヤ人の身に降りかかった運命を思えば、映画監督ひとりの名声など取るに足りないものです」というスピルバーグのコメントもまた泣ける!