其の207:爽やかなドラマ「愛はクロスオーバー」

 いま発売中の「日経エンタテインメント」で、40代以下の男女3000人に行った「世界が終わる前に最後に見ておきたい映画(DVD)は?」というアンケートの結果が出ていた。栄えある第1位に選ばれたのは、なんと「アルマゲドン」(驚)!!
 地球の6割は「海」なのにニューヨーク、パリ、上海と大都市に決めうちで堕ちてくる隕石。酸素や重力のある宇宙・・・さすがに筆者はこの作品は選ばないわ(苦笑:選んだ方、ゴメンね)。代わりに知られざる映画をご紹介!その名は「愛はクロスオーバー」(’87)。邦画です。
 主演は名取裕子に永島敏行。俳優の熱演も、大した事件もない淡々とした映画。でも、これがいいのですわ。デビュー間もないブレイク前の織田裕二が出演している事で一部のマニアは知ってそう^^


 岡崎麻子(名取裕子)は雑誌記者。4年前にレーサーだった主人を事故で失って以来、仕事をしながら一人娘・百合を育てている。亡き夫の友人・多田(平田満)は、秋のレースに出場するためチューニング工場を経営しながら頑張っている。距離をとりながらも静かな愛情を育てている2人。そんな彼らの前にひょんなことから梶山(永島敏行)が現れた。実は麻子の夫が死亡する原因となった事故を起こしたのが梶山で、以来、彼はトップレーサーの座を捨て、さえないスナックのマスターとなっていた。梶山の出現に動揺する麻子。彼の出現には娘の百合が関与していた。皆の中でなにかが静かに変わりつつあった・・・。


 この作品の製作プロダクションは「幻燈社」。永島敏行は幻燈社製作の青春映画「サード」(東陽一監督)で本格デビューを果たしている。彼にとっては「里帰り」的意味合いの出演(ちなみに今作の監督・栗原剛志はこれがデビュー作)。先述した名取裕子平田満織田裕二のほかにも田中美佐子(若いっ)に「クラリオンガール」の川島みき(懐かし〜)、そして歌手・稲垣潤一(!!)が「役者」としてレーサー役で出演しているのだ!!


 「映像と音楽が等位でクロスオーバーさせることは出来ないだろうか」という意図で選ばれたのが稲垣潤一の楽曲だったそうで、彼のヒットナンバーが全面に使用されている。「April」、「夏の行方」、「ドラマティック・レイン」、「1ダースの言い訳」えとせとら、えとせとら。今作の為に稲垣は主題歌「君のためにバラードを」も提供!で、これがまた良いのよ^^筆者の単なる思い込み以上の効果が出ていると思う(・・・多分)。


 ストーリーにはさして新鮮味はなく見え見えではあるが、この映画には「悪人」が一切でてこない。皆が相手や仲間を思いあう非常に「(人として)優しい世界(&時間)」がある。この映像のゆったり感がなんとも心地よい。俳優陣もあえて「芝居、芝居」していない「抑えた演技」を披露。そこがまたいい。
車のレースシーンを楽しむもよし、稲垣の音楽世界(映像も綺麗)に浸るもよし・・・決して大作ではないが筆者なら、こういう映画を観ながら静かに最期を迎えたいと思うのだが・・・他に知ってる人、いるかな〜これ(苦笑)。