其の192:「アルジェの戦い」は本当に生々しい!!

 昨秋、筆者はフランスに行ったのですが、パリ市内でかなりの数の黒人を目にしました。その昔、フランスが植民地にしていたアルジェリアからの移民だと思われます(そういう歴史があった事を知っていたので。違ってたらゴメンね)。
 1966年のイタリア映画「アルジェの戦い」は1950年代から62年にかけてのアルジェリア独立運動を描いた映画。ベネチア映画祭で上映される時「反仏作品」としてフランス代表団が席を立つなど物議を醸した「いわくつき」の作品でもありマス(でグランプリの栄誉に輝いた)。


 映画は北アフリカアルジェリアの都市カスバ(ジャン・ギャバンの「望郷」の舞台として有名)で祖国独立のため結成された「解放同盟」によるテロ活動の様子とそれを鎮圧するべく行動するフランス軍側の動きが交互に描かれる。
 

 テロ活動による白人の死。組織の全容を解明すべく拷問、処刑を繰り返すフランス・・・いまのイラクを彷彿させる怒りと憎しみ、そして暴力の「連鎖」がドキュメンタリー・タッチで生々しく展開。監督のジッロ・ポンテコルヴォはドキュメンタリー映画の出身(今作のほかはほとんど日本未公開で終わっているのが残念)。カメラの「据え置き」と「手持ち」の使い分けが見事!
 また数名の俳優以外は全て現地の素人を起用(中には本当に独立運動に参加した人々も!)、衣装や重火器の類いも当時のものをかき集めてリアルに再現しています。さすが「無防備都市」、「自転車泥棒」ほかに代表されるネオ・レアリスモのお国イタリア、つぼを心得てるよなぁ(おかげで準備と製作はえらい大変だったそうな。プロデューサーは全私財をこの作品に投じ、俳優として出演している)。


 大勢の人々(アルジェリア人、フランス人)が激しく戦う様子は一見、当時のニュース・フィルムかと思うのだが、なんと実際の映像は全く使っていないという。カスバでエキストラをフルに動員して全て映画用に「撮影」されたものだというから驚異的(これは実際に自分の目で確かめて頂きたい)!史実に忠実に描いただけに映画は一瞬も「中だるみ」しません。全編、生の迫力と緊張感がみなぎった傑作です^^


 最後に今作の「音楽」を担当したのは「ニュー・シネマ・パラダイス」ほかで御馴染みのエンニオ・モリコーネ大先生(また来日コンサート開かないかな)と監督ジッロ・ポンテコルヴォの二人。「夕陽のガンマン」を観て気にいったポンテコルヴォが直接モリコーネに連絡して作曲依頼した(だが契約段階で色々あって2人でやることになったんだと)。いつものように名スコアがこの作品にも提供されております^^
 モリコーネは常々「誰が何と言おうと、自分がイメージした曲を書く!」と公言しているお人だが、一部の曲に関してはポンテコルヴォのアイデアをアレンジしている(組織のメンバーの若者らが建物ごとフランス軍に爆破される場面に流れる曲)。で、この曲がまたいいのよ!ファンなら今作の音楽も必聴よん。