其の99:独版「地獄の黙示録」?「フィッツカラルド」

 そろそろジョン・カーペンターとかロバート・アルトマンレオス・カラックスとかサミュエル・フラーの作品も考えたのですがーその案はまた後日に譲るとして<最近、忘れられた監督シリーズ>を。
そこでドイツ映画界の鬼才ヴェルナー・ヘルツォーク監督の大作「フィッツカラルド」を紹介します。<大作>という単語はハリウッド映画の十八番ですがーこの作品もひけをとりません!特に製作過程などはコッポラの「地獄の黙示録」とくりそつ(苦笑)。


 19世紀末のペルー。フィッツカラルド(クラウス・キンスキー)はー「アマゾン川上流にオペラハウスを建設する」という壮大(=無謀)な夢にとりつかれていた。そこで彼は巨大な蒸気船を指揮して、川を進み目的地を目指す。数々の困難をくぐりぬけ、ついには船で<山越え>に挑むー!


 ヴェルナー・ヘルツォークは1967年に長編デビュー以来、同郷のヴィム・ヴェンダース知名度は劣るものの、70年代半ばには「小人の饗宴」、「アギーレ・神の怒り」、「カスパー・ハウザーの謎」等で世界的名声を得た。この「フィッツカラルド」は製作期間・4年半、製作費・1660万マルク、上映時間157分とー彼のフィルモグラフィーの中でも全てが最大級。

 そのヘルツォークとのコンビで知られるのがー「マカロニウエスタン」諸作にも出演した怪優クラウス・キンスキー!!怖い顔した金髪のあのお方です。「テス」、「パリ、テキサス」の美人女優ナスターシャ・キンスキーの親父という1面もある(笑)。無謀な野望にとりつかれて無茶をする、この映画の主人公(ある意味、狂人)にはー彼しか考えられない!まさに<適役>。


 ストーリー同様、この映画の撮影(長期のペルー現地ロケ)も困難を極めた。
病気による主役俳優の交代(それでキンスキーがまたまたコンビを組むことになった)。チーフ・カメラマンが事故で大怪我。現地スタッフ・出演者たちによる意思疎通困難(=内輪もめ)。さらに本物の蒸気船で急流下りや山越えを行ったため(!!)危うく船体がバラバラになりかけたー等など様々なトラブルに見舞われたことでも有名な「地獄の黙示録」の撮影過程まんま(苦笑)。スタッフの苦労はー想像に難くない(涙)。


 「ドイツ・ジャーマン・シネマ」を代表するスペクタクル巨編「フィッツカラルド」−それはCG全盛期の今日の映画では到底得ることの出来ない、本物だけが持つ重厚さに満ちた傑作。それと筆者が贔屓にしているクラウディア・カルディナーレも出てるしね(笑)!