其の96:正統派アイドル&青春映画「翔んだカップル」

 そういえば、これまで「アイドル映画」を取り上げていなかったですね!筆者の少年〜学生時代は、アイドル映画(兼「青春映画」)が数多く公開されていました。勿論、玉石混合ですがー今回取り上げる「翔んだカップル」は大好きな作品の1つ!筆者は原作漫画(柳沢きみお)も全巻揃えていたし、初主演の薬師丸ひろ子(のちに「セーラー服と機関銃」で社会現象を巻き起こす)の大ファンでもあった。今じゃ、すっかり彼女もお母さん役の似合ういい歳になられましたが・・・(涙)。そんな自分自身のノスタルジーを込めて「翔んだカップル」をご紹介!


 弁護士を目指す田代勇介(鶴見辰吾)は東京の名門校入学のため上京。叔父の家(=空き家)に住むことになった彼は<間借り人>を頼んでいたのだが、そこに現れたのは同級生の美少女・山葉圭(薬師丸ひろ子)だった!こうして、1ヶ月の条件で秘密の同棲(?)が始まった・・・。


 柳沢きみおの原作漫画が大ヒットした事で「ラブ・コメ」ブームが起こるーという「日本漫画史」を踏まえても重要な1作だが(笑)、それまで主に松田優作主演のハードボイルド作品の脚本を書いていた丸山昇一が、原作のテイストをうまく生かしてシナリオ化(その分、原作初期にあった「お笑い」部分はやや薄め。勿論、原作の一部だけの映画化)。それをこれが監督デビュー作となる故・相米慎二が見事に映像化している。

 よく「処女作に監督の資質が出る」と言われるが、のちに見られる相米独特の「長回し」もこの作品から既にその兆候が見られる。特にラスト前の<ある場面(ネタバレになるので具体的には書きませんが)>などはー思春期特有の不安・悩み・友情・・・主要人物たちが一同に介して哀切入り混じった表情を捉えることに成功しており、観客もついつい甘酸っぱい気持ちになってしまう。これがホントの「胸キュン」だ(死語・笑)。


 ちなみに薬師丸、鶴見のほか、のちに<大林映画の常連>となる尾美としのりに、これがデビューとなる「ふぞろいの林檎たち」以前の石原真理子も出演!いまじゃバラエティでしか顔を見ない円広志も「教師役」で出ている(笑)。ひろ子(もう呼び捨て:笑)は若いし、意外な人も出演しているー旧い映画を観る<楽しみのひとつ>だ(笑:でもホント)。


 追記:いまDVDで観られるバージョンは、のちに公開された「完全オリジナル版」。「劇場公開版」より10数分長い。相米監督及び薬師丸ひろ子のファンだった人は必見!!