其の65:悪夢的管理社会「未来世紀ブラジル」

 本当はそろそろ「女囚もの」とか「拷問映画」でも選ぼうと思いましたが(笑)、いまの日本政府の現状を憂いて「未来世紀ブラジル」にする!当局に徹底的に管理された窮屈な状況の中で奮闘する男の姿を描くジャンルで言えば<アンチ・ユートピア>SF大作だ。

 
 コンピュータによって管理された某国。反政府活動のテロリスト(ロバート・デ・ニーロ怪演!)が世間を騒がせている。情報省に勤務するサム(ジョナサン・プライス)は英雄となって天使と出会う事を夢想していた。そんなある日、彼は天使そっくりの女性に遭遇!彼女が当局の陰謀によって追われている事を知り、彼女を救うべく行動を起こすのだがー。

 
 まず何より映画の「世界観」が素晴らしい!サイレント時代の映画「メトロポリス」(手塚治虫じゃないよ)を彷彿とさせる状況設定に、「天翔る天使と騎士」、「鎧兜(黒澤へのオマージュ)」、「奇妙な造形の部屋」・・・等などシュールかつブラック、ユーモラスでさえあるイマジネーション溢れる映像が次々と展開され、観る者をただただ圧倒する(ある意味、唐突すぎて唖然とする場面もあるのだが)。
 監督は「12モンキーズ」、「バロン」、「ブラザーズ・グリム」等で知られるテリー・ギリアム。アニメーター出身でコメディ集団「モンティ・パイソン」のメンバーだった彼の面目躍如だ(そういう意味では、やはり独自の世界観を構築するティム・バートンもアニメーター出身)。
 映画は「夢見ることの大切さ」をテーマとしているが、ハリウッド的な終わり方にはあえてしていない(ネタバレになるので、これ以上書けない)。この作品でギリアムはスタジオと揉めに揉め<トラブルメイカー>の烙印を押される破目になるのだが、彼の強引な力技がなければ、ここまでの傑作にはなっていなかっただろうし、我々日本国民は政府の動向をしっかり監視して<悪夢のような管理社会>にならぬよう抵抗しなければならない!!