其の8:倒錯の世界「ボディ・ダブル」

映画「ボディ・ダブル」はブライアン・デ・パルマ監督によるエロティック・サスペンスです。デ・パルマはメジャーなところだと「アンチャブル」や「ミッション:インポッシブル」。サスペンスなら「キャリー」、「殺しのドレス」。「暗黒街の顔役」の現代的リメイク「スカーフェイス」、「オペラ座の怪人」をロック・ミュージカルに仕立てた「ファントム・オブ・パラダイス」等々の作品がありますが(これらはまた後日取り上げます)、彼の得意のジャンル<サスペンス>の中でも筆者が一番傾倒している作品が「ボディ・ダブル」です。

 ひょんなことから友人の所有する豪邸の留守を預かった主人公は、夜な夜な隣の家で繰り広げられる美女のストリップを覗いては楽しんでいた。ところがある日、その女性が何者かに惨殺されるところを目撃してしまう!だが、後日その彼女とそっくりの女性を街で見かけて・・・。

 どうです?デ・パルマの事をちょっと知っていれば、これが「裏窓」や「めまい」等のヒッチコック諸作をヒントに考えられた物語である事は疑うまでもない(笑)。また、この作品でも主人公を中心にカメラが回りまくる<360度パン>等、様々な映像技法を駆使して物語を盛り上げていきます。やはり、この時代の彼の作品は良かった!畑違いのSF「ミッション・トゥ・マーズ」なんてやらなくてもよかったのに(苦笑)。

 ・・・もっとも近年、彼が手がけたサスペンスでも「スネーク・アイズ」や「ファム・ファタール」は、変わらぬめくるめく映像技法を披露したものの(業界人としては勉強になったが)肝心のプロットが破綻していた!「頑張れ、デ・パルマ!」と声を大にして言いたい。

 どうやら今年は最新作「ブラック・ダリア」(あの有名な殺人事件の映画化!)が公開されるとの情報なので、その際には仕事をさぼってでも劇場に駆けつけ(コラコラ)、彼の復活をこの目で確認しようと思っています(・・・半ば希望ですが)。