其の2:ジョン・ウー節、炸裂!「狼」

 第2回目に取り上げるのはジョン・ウー節炸裂の傑作「狼/男たちの挽歌・最終章」(’89)です。
 「M:I−2」(’00・米)以来、ヒット作に恵まれず不調気味のジョン・ウー監督だが、香港時代は本当に凄かった!数ある傑作の中でも「狼」(ちなみに「男たち〜」シリーズとは何の関係もない)は筆者一押しの作品であり、また、今作がアメリカで公開された際に映画関係者を仰天させ、ハリウッドに招かれる事になったのは有名な話だ。
 ラス・メイヤー同様、ウーも自身のスタイルをかたくななまでに固持する数少ない監督のひとり。その特徴をざっと挙げると・・・
①男の友情がプロットの主題(彼が敬愛する小林明の影響?)
②敵と銃をつきつけあう2ショット
③スロー・モーションの多用(サム・ペキンパーからの引用)
④主人公は2丁拳銃。但し、幾らでも弾が出る(笑)
⑤必ず鳩が出る(しかも場所を問わず・笑)
・・・等々があり、後続の映画作家に多大な影響を与えた(私にも)。

 物語はお馴染みチョウ・ユンファ(彼もハリウッドに渡ったが、近年パッとしない)扮する殺し屋が誤って失明させてしまった女性への償いをメインに、友への友情や仁義が全編スタイリッシュなガン・アクションを通して描かれていく。
 中でも白眉は何といってもクライマックス。教会内で繰り広げられるバトルは壮絶の一言!多勢に無勢で圧倒的に不利な状況下での主人公の大立ちまわりは、近年低迷の続く香港映画にはみられない迫力に満ちている(・・・といっても、その立役者が他ならぬウーではあるのだが)。アクション映画ファンを自認するならマストな一本!

 最後に以前、ウーが自作で好きな作品に挙げていたのが以下の4本(年代順)。「男たちの挽歌」(’86)、「狼」(やっぱり)、「ワイルド・ブリット」(’90)。そして「フェイス/オフ」(’97)。