其の381:「アルマゲドン」の元ネタ?「妖星ゴラス」

 「新作レビュー状態」が続いたので、懐かしの映画紹介路線に。「ディザスター(あるいはパニック)ムービー」の中のひとつに属するのが<隕石衝突系>。「ディープ・インパクト」や、かの底抜け超大作アルマゲドン」辺りがそれに該当します。筆者の世代的には「メテオ」なんだけど(苦笑)。そんな諸作品のルーツともいえる映画が我が日本国の「妖星ゴラス」(’62)!ゴラスだよ、ゴラス(鹿児島弁の「ごわす」ではない)!!こんなインパクト大の素晴らしいネーミングをどうやって考えつくのだろうか(当初は「ラゴス」だったんだけどね)?!タイトルも凄いが、内容はもっと凄いぞ(本当)!!!


 1979年ー。日本初の有人土星探検ロケット(!)「JX−1隼号」の園田艇長(=「海底軍艦」の田崎潤)以下搭乗員たちは、大きさは地球の4分の3ほどながら、質量が地球の6000倍もあるという黒色矮星「ゴラス」発見の一報を受け、急遽調査に向かう。ところがゴラスの引力圏内に捉えられ隼号は消滅!隼号が送信した観測データからゴラスが今の進路を保っている場合、1982年に地球に衝突するという事が判明する。そこで日本宇宙物理学会の田沢博士(=池部良)と河野博士(=加山雄三の実父・上原謙)は、国連科学会議において「ゴラスを破壊するか、あるいは地球が安全エリアまで移動してやり過ごすか」の2つのプランを提案する。「JX−2鳳号」によるゴラス観測の結果、質量は地球の6200倍まで増加していたため、もはや爆破は不可能!<南極大陸に巨大ロケット推進装置を建造して100日間で地球を40万キロ移動させて、その軌道を変える>という「地球移動計画(通称:南極計画)」が世界各国の協力によって実行に移される。果たして地球はゴラスを回避することが出来るのかー!?

 
 ・・・とまぁ、物凄いお話である。良くいえば壮大なスケール、正直にいえばムチャクチャなストーリー(笑)。但し、当時の金額にして製作費3億8千万円、製作延べ日数300日もかけている東宝特撮超大作!諸外国でも上映されているので決して子供だましではない(と思う。いや・・・思いたい^^)。「メテオ」や「アルマゲドン」のほか、「さらば宇宙戦艦ヤマト」の<白色彗星>の設定にも影響を与えていると筆者は邪推する(他の星を破壊しながら進むとこなんてソックリだし)。

 <あらすじ>ではほとんど省略しましたがバジェット同様、俳優陣も超豪華!先述の池部良上原謙両大先生の他、黒澤映画の常連・志村喬小沢栄太郎、<二代目水戸黄門西村晃ら演技派に加え、久保明佐原健二天本英世白川由美水野久美平田昭彦・・・といつものメンバー(お約束)。「マタンゴ」で妖艶さをふりまいた水野久美は入浴シーンもあり、大人の観賞にも耐えうるよう計算されている(=これを俗に「観客サービス」といふが、過剰な期待はしないように^^)。

 もっちろん、監督は御馴染み本多猪四郎特技監督円谷英二。今作の製作に備えて本多監督は東大理学部天文学科に通い、<地球移動>の計算を依頼しリアリティー(!?)を持たせた(→劇中、池部が説明する数式は東大の先生が実際に計算して書いたもの。但し、あくまで移動のための推力だけの話であって、そのために生じる様々な事象はあえて無視したフィクションを前提としての計算式)。地球の移動中、割合のんびり暮らしている家族の描写はーいかがなものかと思うけど(地球の表面はえらいことになってる筈:苦笑)。

 円谷はゴラスや宇宙ロケットが登場する宇宙の場面のほか、南極に巨大ジェットを建造&噴射するシークエンスに、ゴラス接近によるスペクタクルシーン・・・と山ほどある特撮パートに「とんでもない作品に取りかかったものだ」とコメントしたほど。更に建設途中、南極の地中から現れる巨大怪獣マグマ(!)とそれを退治する部分も合成の都合上、円谷自ら俳優陣に演技指導!彼の労力は・・・並大抵ではなかっただろう。案の定「怪獣マグマ」のシーンはストーリー上、余りにも唐突なんでアメリカ等で売っているソフトではカットされている(苦笑)。本多監督もマグマ登場には反対した、というから・・・トホホ。

 今作の見所は随所に使われている精密なミニチュアの数々。南極に建築資材を持ちこむ世界各国の大船団に一連の巨大ジェット建造シーン(手前に作業員も合成)は今観ても妙に強引な説得力あり!津波で水没する東京や大阪の場面では実際の河川にミニチュアを大量に持ち込み(→流されないよう固定するのに苦労したそうな)、スタジオにプロパンガス200本を並べてジェット噴射を撮影・・・と(いうまでもなく現場は灼熱の熱さ)。いまならCGで作れる映像も、当時は全て実写だからねぇ(尊敬)。美術さん、小道具さん他<各種造形スタッフ>の気合の入った仕事ぶりが作品のスケール感を支えたわけでもあるので、そこんとこ要注目ということで!「どのロケットが、後年ウルトラマンで流用された」とかの細かいネタは長くなるんで割愛^^。

 舞台は1979年から1982年だが(懐)、人類が有人土星探検ロケットを飛ばすことは21世紀の現在に至っても未だ叶わず。日本なぞ有人ロケットを造ること自体「事業仕分け」されて永遠に無理かもしれない(哀)。


 
 <どうでもいい追記>①:年末公開予定の「宇宙戦艦ヤマト」の実写パートの映像を観たが・・・予想通り危険な香りがプンプン(苦笑)。
 ②:先日、高名なアメリカの映画評論家ロジャー・エバートが「映画が3Dばかりになるのは良くない」と声明を出したが(→詳細はネットで探して読んでおくれ)、筆者もその通りだと思った。