其の153:オリジナル版とリメイク作

 昨今、邦洋問わずリメイク作が非常に増えました。で、結果<失敗>したものも少なくない。「戦○○○隊」や「日○○没」、「ポ○○○ン」とか(笑)。現在、ヒット中のハリウッド映画「ディパーテッド」も香港映画「インファナル・アフェア」3部作のリメイクです。だが、この「ディパーテッド」はオリジナルと甲乙つけがたい快作となった!


 オリジナル、リメイクどちらも観ていない人の為に<オリジナル版>で簡単にお話を書きますとーアンディ・ラウ黒社会の一員でありながら警察組織に入った男。一方、トニー・レオンは警察官でありながらマフィア組織に入った<潜入捜査官>。どちらも正体がバレたら命はない!互いに大した接点もないまま<仕事>を続けていくものの、やがて警察、マフィア双方とも身内にスパイがいる事を察知。調査が開始される。窮地に立たされた二人の運命はー!?(「インファナル・アフェア」)


 以上が香港オリジナル・シリーズ1作目のお話(「2」は「1」の前日談。「3」は「1」の後日談)。正直、潜入捜査官の話は過去にもあったし、決して目新しいものではない。だが、警察・マフィア双方に潜入した二人がやがて自分の身を守りながら、相手を探してゆくというサスペンスフルなストーリーと重厚な演出で大ヒット!ハリウッドがリメイクしたのも頷けます(権利を購入したのはあのブラッド・ピット)。但し、筆者はラストが余りに救いがなさすぎて手放しに絶賛はしませんが・・・。


 ハリウッド・リメイク版ではアンディ・ラウの役をマット・デイモンが。トニー・レオンの役をレオナルド・ディカプリオが演じています。そして監督は巨匠マーティン・スコセッシ!!彼は香港映画のファンでもあるので、今回の仕事を引き受けたとの事(ジョン・ウーをハリウッドに呼んだメンバーのひとりでもある)。


 勿論、「1」のリメイクですから基本的な設定やストーリー展開はほぼ同じ(若干「2」の要素が入ってもいる)。「オリジナル」では、2人の苦悩と悲哀が強調されていましたが、この点はリメイク版は軽い。途中の「ガサ入れ」でのサスペンス描写も緊迫感はオリジナルの方が上です。しかし、オリジナルには観られなかった「ユーモア」がリメイク版にはある!


 マフィアのボスを演じるジャック・ニコルソン(初のスコセッシとのお仕事。当初はロバート・デ・ニーロが候補だった)!相変わらず怖い上にとんでもないスケベオヤジ(笑)。「バットマン」のジョーカー同様、悪役を嬉々として演じています。リアルに考えたら、こんなマフィアのボスは・・・いない(笑)。
そして唯一のオリジナル・キャラクターに扮したマーク・ウォールバーグティム・バートン版の「猿の惑星」、「ブギーナイツ」のデカ×ン男)がヤンキー気質丸出しの警官を好演!こいつはエロ・スラングしか口にしない(笑)。何故、セクハラで訴えられないのかは謎(笑)。彼の役が何故新たにわざわざ<設定>されたのかは、観てのお楽しみ(ホント)!

 
 勿論、マーティン・スコセッシ印のバイオレンス描写も久々に炸裂(前作「アビエイター」には皆無だった)!オリジナルにはない<サプライズ>も追加、オリジナルを観ている人にも配慮した作りだといえよう(これで筆者の溜飲も下がった!しかし「ラストカット」に出て来る×××はマジなのかギャグなのか)。


 冒頭に書いたようにあらゆる要素を<総合的>に考えるとー若干香港版に軍配が上がるものの、ハリウッド版も捨てがたい!本当に甲乙つけがたいのです。どうせ作るなら遥かに劣るリメイク版ではなく、オリジナルを凌駕するかも知れぬ「ディパーテッド」のような質の高い作品にしてもらいたいものです。