其の36:おフランスな異色作「デリカテッセン」

 フランス映画「デリカテッセン」は、大ヒット作「アメリ」の監督ジャン=ピエール・ジュネと相棒(当時)マルク・キャロのふたりが作り上げた摩訶不思議な一品(長編デビュー作)。当時、筆者はこの映画の「予告編」を観て、その訳のわからなさに思わず劇場に足をむけた思い出がある(笑・でもホント)。

 遂に起こった<最終戦争>が終了して15年後のパリ郊外。そこにポツンと一軒残された精肉店デリカテッセン」を舞台に店の主人と住人たちが「肉(=人間!)」を巡って対立!壮絶(?)な戦いを繰り広げる・・・。

 簡単に言えばSFアクション版「注文の多い料理店」といったところか(意味の分からない人は宮沢賢治の本を読もう!)。まず何より目がいくのは、その<映像美>!監督がビデオ・クリップやCF出身ということもあって(リドリー・スコットデビッド・フィンチャーと一緒)近未来ながらクラシカルな美術、色彩(照明の当て方が完璧)、キャラクター造形や衣装など全ての面において丹念に作りこまれている。また、いかにもフランス人的なエスプリが物語全体に溢れ、観ていて非常に楽しい!一時期低迷していたフランス映画の悪いイメージ(倦怠感いっぱい&展開がタルい)を大きく変えたと言ってもいいだろう。

 主演はドミニク・ピノン。ジュネがハリウッドで「エイリアン4」を監督した時にもこの人は呼ばれています(車椅子に乗ってた人)。若かりし彼の演技にも注目!

 ちなみに「エイリアン4」でハリウッドのスタイルに懲りて、フランスに戻ったジュネがそれまでの鬱憤を晴らすが如く思いのままに演出したのが「アメリ」!・・・「一寸先は闇」と言いますが、「人生」とは本当にどう転ぶのかよく分からないものだ(苦笑)。