<其の718>イタリアン・ホラーの名作「血ぬられた墓標」

 筆者の少年時代の映画界は「スター・ウォーズ」きっかけの“SFブーム”、「ゾンビ」の大ヒットによる“ホラー・ブーム”、ブルース・リーの“カンフー・ブーム”・・・これに加えて日本国内では「宇宙戦艦ヤマト」に端を発する“アニメブーム”・・・と、いま考えると様々なブームによるカオス状態だった(苦笑)。

 特にホラーでいえば「アメリカ製」と「イタリア製」が大量に上映(←筆者含め、子供は製作国など気にせず、皆いっしょくたにして観てた)。ド派手なゴア描写で劇場にかけつけた人々を大いに怖がらせたものだった(「金田一耕助」シリーズもこのカテゴリーに入る)。

 そんな<イタリア製ホラー映画の父>ともいうべき存在がマリオ・バーヴァ監督(「スーパーマリオ」のモデルではありません)!当ブログでも以前「白い肌に狂う鞭」が紹介済(詳しくはバックナンバーを読んでね^^)。今年はマリバー没後40年目という事で、ごく一部で盛り上がっている・・・らしい。ごく一部だと思うけど(笑)。そんな状況に乗っかって、今回は彼の代表作の1本にして、その後のイタリアン・ホラーのルーツともいえる「血ぬられた墓標」(’60)を紹介します。これも有名作なので・・・さくっと書きマス。さくっと^^!

 

 中世のイタリアー。「魔女裁判」よって王室の美しい姫(=バーバラ・スティール)とその恋人は処刑される事になった。姫は自分たちを死刑にした一族に永劫の呪いをかけて死んだ・・・。

 200年後。モスクワの医学会に出席する老医師とその助手は道中、森の中で崩れかけた礼拝堂内で魔女が葬られた石棺を発見する。この行為が処刑された2人の復活のきっかけとなってしまう。

 甦った2人は王女の曽孫娘カチア(=バーバラ・スティール2役)を含む子孫たちへ復讐を開始するー!!

 

 撮影監督出身マリバーの監督デビュー作。今作では撮影に脚本も兼任してる(原作はニコライ・ゴーゴリの「ヴィイ」なんだけど、元がわからんぐらい改変)。冒頭の「魔女裁判」による処刑執行シーン、バーバラ・スティールに悪魔の顔を施した「鉄の処女」もどきの鉄仮面(内側に沢山のとげとげ)を被せて、でかいハンマーで顔にバッコーン!仮面から血、ドッピューン!!・・・これでつかみはオッケー!後は場所はイタリアながら、イギリスのゴシックホラーを彷彿させる展開及び映像となる^^。

 <魔女>といいつつ、復活した彼氏は気持ちゾンビっぽいし、人間の血を吸ったりする吸血鬼要素もあったりして中途半端な設定ではあるけれど(後は詳しく書けないけど、魔女は復活しておきながら、予想に反して・・・以下自粛)、映画全体はモノクロ映画の利点を生かしたおどろおどろしい雰囲気が充満!このムードは・・・現代のホラー映画にはない手触りだ。またバーヴァ自らが考案した特殊撮影も効果的。例えば、バーバラの顔のしわが次第に浮かび上がる様子が1カットで撮影されているが、これは赤いペンでしわを書いて、赤色の照明から徐々に緑色の照明に変えていくと、しわの線が浮かび上がるというトリック。バーヴァの師匠、リカルド・フレーダ監督作「吸血鬼」(’57 日本未公開)がイタリア初のホラー映画といわれているが、後年作られた今作の方が海外でもヒットし、未だに語り継がれているのは・・・この辺りの完成度の差なのかも。

 2役を演じ、今作で“スクリーム・クイーン”となったバーバラ・スティールはイギリス人(美人っす)。キャスティングされ、イタリアに行ったのはいいものの言葉が分からず現場ではえらく苦労したそうな。中でも復讐に燃える魔女の時と、恐怖に脅える可憐なお姫様の演じ分けは必見^^。彼女はこれで一躍メジャーとなり、あのフェリーニ作品にもオファーされる事となる。

 どういうラストを迎えるのかは、ご興味ある方は是非映画を観て頂きたいのですが、

それにしても「血ぬられた墓標」とか「白い肌に狂う鞭」とか・・・当時の邦題、凄すぎ(爆笑)!マリバーが製作に協力した「怪談生娘吸血鬼」(’60)とかさ、令和の現代ではつけたくてもつけられないだろうな~^^

 

 ようやく映画館も開きましたが・・・延期された「エヴァ」の最終作は、いつ公開になるのだろう??